不登校が治る「コンプリメント」とは何なのか この本は20代の自分に読ませたかった
ここで、コンプリメントとは何かについて、説明したい。表紙には「子どもの心を育て自信の水で満たす、愛情と承認の言葉がけ」と書かれている。そしてオビではさらに具体的に「その子のよさを認め、自信を取り戻させる言葉がけ」と言いかえられている。伝わるだろうか。より深く理解するには、具体的な事例にあたる必要がある。
本書の第1章で「不登校や身体症状を解決した35の事例」が紹介されている。自信の水が枯れたときの症状は、不登校だけではない。起立性調節障害(起きられない)、いじめ・暴力等の反社会的言動、心身症から起こる頻尿・皮膚炎・パニック障害など多岐にわたる。私が冒頭で書いたレベルの「学校に行きたくない心理」とは異なり、非常に深刻なものだ。
小4のGW明けから不登校になり、ほぼ2年間、友達を拒絶し、パソコン三昧の小学生。幼稚園の頃から登園しぶりがあり、遅刻や欠席を繰り返しながら小学3年生の9月から不登校になった子ども。恐ろしい目つきで「おまえなんか消えろ!」と怒鳴ったり、物を壊したりして家庭崩壊になった事例など、当事者による生々しい手記の数々がそこにある。
第2章では、その予兆と具体的な身体症状が、事例とともにまとめられている。この章を読むと、周囲の教師や医師がどのような支援をするのかがわかる。「ストレスを与えず、好きなことをさせて良くなるのを待つべき」という支援を受けて、傷口を深めた例も多いようだ。基本的には、何も手を打たずに時間が経てばたつほど、事態は深刻になるという。
コンプリメントが子育ての負の連鎖を断ち切る
第3章では、コンプリメントの基本の考え方をまとめ、第4章ではその課題と今後のプランについてまとめられている。ここで私の心をとらえたのは、コンプリメントが子育ての負の連鎖を断ち切ると書かれていた点だ。愛情豊かに育てられればそういう子育てができるが、そうでなければ難しいという。貧富の格差と同じように、負の連鎖を断ち切らなければ「自信の水の格差」は広まるばかりなのだ。
実際に子育てをしてみると、叱ることの連続でつい自分を責めてしまうものだ。また、褒めるときでさえ、心理操作しているようで、なんとなく後ろめたさを感じてしまう。本屋さんに行くと、叱る子育てと褒める子育てを薦める本がそれぞれ同じように並んでいて、どちらを読んでも答えは出ない。なんとも、もどかしい。
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