ブリヂストン、国内生産でも勝てる「AI工場」 売れ筋タイヤを次々生み出す秘密兵器
ブリヂストンが成型工程の完全自動化への取り組みを始めたのは2008年までさかのぼる。中国を中心に新興国メーカーが台頭してきた時期だ。圧倒的な低コストで生産する低価格タイヤが市場に溢れ出してきたことで危機意識が高まった。
また、人手不足も深刻化しつつあったという。彦根工場では3交替で深夜も工場を動かしているが、足元でも人員を集めにくくなっている状態は続いている。さらに、新興国でもジョブホッピングが盛んで人員の定着率の悪さにも悩まされていた。
生産コスト低減で新興国勢に対抗
そこで、特に価格競争力を求められるボリュームゾーンである13インチから17インチのタイヤの成型を自動でできるように作られたのがエクサメーションだったのだ。ブリヂストンの成型工程のノウハウを詰めこんだシステムだけに、海外工場での導入も検討している。
すでに導入が決まっているのが、彦根工場の姉妹工場でもあるハンガリーのタタバーニャ工場。2018年の導入に向け準備を進めている。また、ロシアに新設する工場でも導入が予定されている。
国内の高い生産技術を容易に海外移転できる。裏を返せば、エクサメーションさえ導入すれば、競合他社もタイヤ生産の要といえる成型工程でブリヂストン並みの競争力が手に入ってしまう。開発に多くの時間を要した技術でもあり、情報流出は何としても避けたい。それが撮影禁止などの厳格な情報統制に結びついているようだ。世界首位を走るブリヂストンは常に追い掛けられる存在でもあるのだ。
数百に及ぶセンサーを使って、生産の適正化を進める新システムの強みは、集めた情報を様々な用途でも活用できるということ。すでに新たな取り組みが始まっている。
一つには設備の保全データ。油の補給時期や消耗部品の交換時期など、データから分析した情報を消耗品メーカーなど社外の関連企業と共有することで、設備の消耗部品の受発注を効率化でき、操業を途切れさせないようにすることができる。彦根工場周辺の協力会社と来年3月までに体制を整えたいという。
さらに、原材料のサプライヤーとの情報共有についても年内に検討が始まる。調達してみたが生産でうまくいかない場合など、部品の良し悪しもデータで見える化されるため、サプライチェーン全体の改善につながることをブリヂストンは期待する。
まだ成型工程で新システムが担う部分は一部に過ぎず、大半は従来どおりの手作業が行われているものの、国内で生産しても新興国勢に匹敵するコスト競争力を生み出しつつある彦根工場。欧州でもこのAIを活用した新システムを展開し、グローバルでの競争力は一層高まりそうだ。世界断トツの首位固めが生産面でも進んでいる。
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