中核子会社が上場、勝負に出るサントリー 非上場を貫く戦略を転換。思惑どおりに成長できるのか。

拡大
縮小

優良企業めぐる争奪戦も

日本勢も、アサヒグループホールディングスがマレーシアやインドネシア企業に出資しているほか、サントリーもインドネシア企業に出資するなど市場開拓に余念がない(表)。「アサヒやサントリーは各国のトップ企業を買収、もしくは出資しており、欧米企業に引けを取らない地位を獲得している」(ディコスタ氏)。

だが、さらなる拡大にはハードルもある。一つは「各国の飲料市場はすでにトップ企業が固まりつつあり、買収先や合弁をする相手は限られる」(世界の飲料業界の調査を手掛けるカナディーンのフィリップ・チャン氏)ことだ。

手つかずの企業の多くはオーナー系の非上場企業で、「単独で収益を確保できているかぎり、短期的に身売りを考えるかは微妙」と、東南アジアの飲料企業向けのコンサルティングを手掛けるサントン・エムズ・ストラテジー・コンサルタンツ代表のトニー・エムズ氏は話す。

優良企業には世界各国の食品・飲料企業が目をつけているだけでなく、現地企業からも「生き残るにはほかの現地企業と統合するか買収するしかない」(フィリピン食品大手ユニバーサル・ロビナ経営企画室長のマイケル・リワナ氏)との声が聞こえる。サントリーBFは「これまで結果を残しているので、そうした点を理解してもらえるのではないか」(鳥井社長)と話すが、最終的にはカネが物を言う可能性が高い。

また、「東南アジアといっても、各国で文化もニーズも大きく異なる。市場開拓を進めるには、各国の文化をしっかり理解する必要がある」(ディコスタ氏)との指摘もある。

「世界で米コカ・コーラ、ペプシコに次ぐ飲料会社になりたい」と鳥井社長は言う。非上場という方針を転換して、グローバル化加速へと舵を切ったサントリー。これまで以上に経営手腕が問われることになる。

(撮影:風間 仁一郎)

週刊東洋経済2013年7月13日号

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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