優良FA部品メーカーvs空売りリポートの行方 丸紅、サイバーダインの次はSMCが標的に
そして会計監査を行った清陽監査法人に対しても、「時価総額2兆円の大企業で多くの海外子会社を抱えているのに、監査法人は小規模。これだけ複雑な大企業の監査ができるのか」と疑問を呈する。さらに、清陽監査法人が入居するビルにSMCの子会社の入居している点や、前身の監査法人がいくつかの企業の粉飾決算を見抜けなかったことも独立性や信用性が低い根拠として挙げている。
ウェル・インベストメンツ・リサーチはこうした疑念通りの会計スキャンダルが発覚したり、営業利益率が過大だと判明したりすれば、PERなどから株価は約3万円の水準から50~85%下落する可能性があるとリポートで指摘している。
これに対してSMC側はリポートが公表された12月13日に「適正な会計処理を行っており、当社の見解とは全く異なる」と反論。さらに、14日には、リポートに対する見解を発表した。要約すると内容は下記の通りだ。
会社側の反論は?
これに対してウェル・インベストメンツ・リサーチは、15日に再びリポートを発表し、「『会計処理に問題はない』としただけで、証拠は何も提示されていない」として、改めてSMCの会計処理に疑問点があることを突き付けた。
SMCは、現時点で追加の見解などのリリースを出す予定はないという。
泥仕合の様相を呈する一方、株式市場は静観の構えで、株価は2万8000円前後でいったんは落ち着きを見せている。ただ、12月27日にシトロン・リサーチという空売りファンドが「SMCは日本版エンロン。ウェル・インベストメンツ・リサーチの報告を支持する」というコメントを発表し、株価にも少なからず影響を及ぼした。
ウェル・インベストメンツ・リサーチの荒井氏は「丸紅のリポートを出したあと、SMCの会計慣行がおかしいとのメールがあり、調査を進めていった」といい、半年かけてこのリポートを完成させた。そもそもSMCも機関投資家向けの説明会や、記者向けの決算会見を定期的に行っているが、社長インタビューなどのマスコミ対応がほとんどなく、どちらかといえば閉鎖的な企業という印象もダメ押しになった可能性もある。
2016年に入り、SMCだけでなく、伊藤忠や日本電産など「空売りファンド」や「空売りリポート」から標的にされるケースが相次いでいる。こうした背景には、東芝の不正会計事件を筆頭とする日本の会計基準や決算に対する不信感があるのかもしれない。
荒井氏が「厳しく監視するシステムが足りていない」と語るように、日本の会計制度に対する問題点がこうした疑念を生み出す結果となっている。会計基準を守っているだけでは、海外の投資家は満足できない状況になっているのか。
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