アベノミクスは格差縮小に効果があったのか

格差がわずかに縮小した本当の理由

ただ、格差を縮小させる要因は、経済成長による収入増だけではもちろんない。もうひとつの統計数字をみると、日本の格差の違った姿が見えてくる。

厚生労働省が9月に公表した「所得再分配調査報告書」(2014年)でジニ係数を確認してよう。これは、社会保障制度における給付と負担、税制度における負担が、所得の分配にどのような影響を与えているのか調べたものだ。前述の全国消費実態調査と異なって、社会保障がどれほど機能しているのかに焦点を絞り、1962年からほぼ3年に一度のサイクルで調査している。

当初所得格差は拡大、再分配で縮小

まず、世帯単位でみると、当初所得の格差(ジニ係数)は2002年0.4983、2005年0.5263、2008年0.5318、2011年0.5536、2014年0.5704と、年を追うごとに拡大している。これだけみると、日本の格差は拡大してきている。

しかし、社会保障(年金や医療などの給付と社会保険料負担)や税による再分配によって、再分配後の所得格差は2~3割縮小し、かつ格差の度合いもほぼ横ばいとなっている。ジニ係数は2002年0.3812、2005年0.3873、2008年0.3758、2011年0.3791、2014年0.3759となっている。

さらに、税と社会保障のどちらの再分配効果が大きいのかを比べると、年金や医療といった社会保障による格差縮小効果が圧倒的に大きいことがわかる。2014年の場合、社会保障の改善度が31.0%もあるのに対し、税によるジニ係数の改善度は4.5%に過ぎない。ちなみに、全国消費実態調査と同じように世帯員ごとの等価所得でみても、同様の結果が得られている。

同じ2014年の2つの統計数字を比べてみると、安倍首相が胸を張るように、格差はわずかながら縮小しているが、その理由はアベノミクス効果というより、社会保障制度がうまく機能しているから、と考えたほうがよさそうだ。

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