トヨタ小型バス、「24年ぶり」全面改良の理由 誰でも一度は乗った「定番バス」の開発秘話

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海外では現場作業者の需要が大きく、汚れてもいい低いグレードが人気というが、日本では先述の通りサービス業で使われることが多い。今回集まった法人顧客からは快適性を求める声が多かった。また最近では訪日観光客が増えていることを受け、観光に最適なバスも求められていた。

バスに対する需要の変化がある中、モデルチェンジがなぜ24年ぶりになったのか。「トヨタでは乗用車がメインストリーム。今までCV(商用車)には日が当たりにくかった。コースターも小さな改良はやってきたが、たくさん売れるクルマではないので、なかなか思い切ったフルモデルチェンジはできなかった。だが、組織改革を機に一新したいと思った」。

組織改革で商用車の開発スピードがアップ

トヨタCVカンパニーの増井敬二プレジデントは組織改革に手応えを感じている

こう話したのはCVカンパニーの増井プレジデントだ。今回新型コースターの開発を手掛けた社内カンパニーのトップだ。トヨタは縦割りだった機能別の組織と決別し、2016年4月に車種別のカンパニー制に移行。意思決定を速くする組織改革に取り組む。新型コースターはCVカンパニーが発表した最初の新型車だ。

開発自体はカンパニー制の移行前から進んでいたが、「カンパニーになったからこそ最後の仕上げで高いレベルまで持ってこれた。開発と生産の部隊が一体になったことで、いろいろな問題点を短時間でつぶせた。生産ラインも一新できた」と増井氏はカンパニーとしての成果を強調する。

そのうえで、「従来の縦割り組織だと生産の声が開発に届かなかった。だがカンパニーになって、現場での提案がすぐに生産技術、開発に伝わり、最終的な意思決定をするチーフエンジニアまで一気通貫だ。資金のいる局面でも従来なら役員(の決裁)まで階段が多数あったが、今は違う」と自信を見せる。

CVカンパニーはトヨタの生産子会社、トヨタ車体が中核となって多くの商用車を手掛けている。SUV「ランドクルーザー」シリーズや、「ヴォクシー」や「ノア」などのミニバン、米国で人気のピックアップトラック「タンドラ」や「タコマ」、さらに「ハイエース」などだ。「2015年にトヨタが世界で販売した910万台のうち、約3割をCVカンパニーが占めている。全体収益への貢献度は高く、トヨタの屋台骨として地盤をしっかり固めたい」(増井氏)。

今後は従来のような個別車種ごとの最適化ではなく、10年先を見据えて車種群ごとの役割定義とラインアップを考える。バス、SUV、ミニバンなど類似車種ごとに、プラットフォームの一括開発などを進める方針だ。これによって開発スピードを速め、よりタイムリーな商品供給をしていきたいという。

現行のコースターは、トヨタの国内販売車としては1997年発売の最高級セダン「センチュリー」をも上回り、最も古い車種だった。これまでのしがらみを断ち、カンパニー制を打ち出した豊田章男社長が唱える「もっといいクルマづくり」。その商用車第一号がどう評価されるか。”地味な”挑戦が始まった。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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