円安に株価がこれまでのように反応しない理由は、米国の金利上昇が資産価格に対してもたらすマイナスの影響を市場参加者がそろそろ気にし始めたからだと考えるのが妥当だろう。
経験的に言って、米国の利上げが始まってから、一回目、二回目の利上げで株価がクラッシュするケースは少ない。高水準の株価が維持されながらも、徐々に金利上昇の負担に耐えられなくなった時に、上げ相場は終わる。いかなる強気相場といえども、金融引き締めに最終的に勝つことは出来ないのが相場の原則だ。
「今回は前回と違う」と考えてはいけない
トランプ氏の大統領就任後に、インフラ投資や減税(本当にできるのか?)が実現して、相場が盛り上がる事態も可能性として考える必要はあるが、投資にあって最も危険な言葉の一つは「今回は、前回と違う」だ。
筆者は、巷間言われているように、2017年に3回も利上げするほどFRBは利上げに積極的でないと感じているが、3回まで行かなくとも、次回あるいはその次の前後に米国の株価が大きく下落するような局面が来てもおかしくないと考えている。
もちろん、株価の暴落は、利上げにタイミングを合わせて起こるわけではない。「ある日、ふと起こる」のが通例だ。今すぐではないとしても、そろそろ警戒し始める方がいいのではないだろうか。筆者は、現在、そう考えている。
かつて、ストラテジストを仕事としている知人が「上がったら売りとか、下がったら買い、とかいうような予想は男らしくないですね。単に、『売り』か『買い』のどちらかを言えばいいのですよ」と言うのを聞いて、「潔い!」と思って感動したことがある。
今、筆者が彼のように潔くなるためには、「まだ強気(=買い)」なのか「もう弱気(=売り)」なのか、どちらかに決めなければならない。
とはいえ、強気にも弱気にも「程度」がある。投資家は、自分自身が実際に持っているポートフォリオをどのように調整するのがいいかを、自分が持つ「見通しの内容」とその「実現確率」と「自分が間違えている確率」を見積もった上で「程度の問題として」決定しなければならない。
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