次に多く導入されているのが、「ノー残業デーなどの設定」(52%)。ノー残業デーとは、たとえば「毎週水曜日は残業してはいけない日」と決め、その日の残業は認めない制度。週1日をノー残業デーとする企業が多い。残業をさせない方策として、社内でのアナウンスや照明の消灯などを行うのが一般的である。
約3社に1社(32%)が導入しているのが「フレックスタイム制度」だ。通常の勤務では、労働時間は9:00~18:00のように決められているが、フレックスタイム制度では、1日の労働時間の長さを固定的に定めず、一定期間(1カ月以内に限る)の総労働時間を定める制度。1日9時間働く日もあれば、6時間しか働かない日もあり、1カ月の総労働時間が所定の時間分に達していればよい。フレックスタイム制度は子育て世代の要望が高く、保育園の送迎や子供の学校行事への参加など、この制度を上手に利用することで育児と仕事を両立している社員も増えている。
「深夜残業の抑制・禁止」も31%が導入している。深夜残業とは22:00~翌5:00の残業のこと。労働基準法では、深夜業に対して通常勤務の5割増しの賃金を支払うことが義務付けられている。企業側からみれば、深夜残業を抑制・禁止すれば残業代が削減でき、オフィスの電気代や空調代も節約できる。しかし本当の問題は、深夜残業をしなければならない状態に社員が陥っている状況だろう。
「朝方勤務」という伊藤忠の実験
「朝方勤務」は伊藤忠商事が実施したことでマスコミに取り上げられた仕組み。残業が常態化していたなかで、岡藤正広社長がトップダウンで決めた施策と言われる。まず深夜勤務(22:00~5:00)を禁止し、20:00~22:00勤務も原則禁止にした。その分、早朝勤務時間(5:00~8:00)に深夜勤務と同様の割増賃金を支給し、8:00前に始業した社員には軽食を支給するという内容だ。同社ではこの施策と同時にすでに導入していたフレックスタイム制度を廃止した。多くの社員が10時に出社し夜遅くまで働く状態が定着していたからだという。朝方勤務の奨励は、HR総研調査では実施企業はわずか5%と少ないが、今後はこうした成功事例に追随する企業も出てくるだろう。
ただ、こうした残業時間を削減するための施策を多くの企業が行っているにもかかわらず、長時間労働がいまだに残っていることも事実。前述したとおり、月80時間超の残業をする社員がいる企業は、約半数にものぼる。長時間労働からくる過労死の可能性は、電通に限らず起こり得る。
残業がなくならないのは、仕事をする人と業務量のバランスが取れていないからだ。ならば人を補充すればよさそうなものだが、一般的に言えば、人には人件費というコストがかかり、増員にも限界がある。さらに近年は少子高齢化によって人材獲得競争が激しく、募集しても適切な人材を採用することが難しい。そうした中で、長時間労働を削減するには、一人当たりの生産性を向上させるほかないだろう。
文化として今日まで長時間労働を根付かせてしまった日本企業。働き方改革で真剣に日本全体の生産性向上に取り組んでいく必要がありそうだ。就活生もこうした日本の労働環境の現状を知っておいた方がいいだろう。
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