「部下が働かない」と嘆く上司の残念な考え方 自分で答えを出させないと仕事は覚えない

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「部下に答えを教えるな」と言われても、どうしても教えたくなってしまうのが人情というもの。だからここで補足をしておく。ちょっと卑近な例を紹介することをお許しいただきたい。

高校3年生になり、同級生が鼻息荒く学習計画を語ってくれたことがある。

「俺、今日から毎日英単語を10個ずつ確実に覚えていくんだ。1単語100 回書き取りすれば確実に覚えられる。300日やり通したら3000単語。この方法ならばっちりだ」

のんびりしていた私はへえ、偉いなあ、と思った。翌月、どんな調子かその友人に尋ねてみた。するとその友人は暗い顔をして次のように語った。

「シノハラー、聞いてくれよ。確実に覚えたはずなのに、3日も経つといくつか忘れてるんだよ。1カ月経ったら、見覚えもないんだよ。あれだけ確実に覚えようと頑張ったのに、俺の記憶力、なんだったんだろう……」

記憶力というのは不思議なもので、覚えようとすればするほど覚えてくれないという現象がある。この友人の話に、私はいたく同情した。私自身、中学生になって初めて英単語を覚えようとしたとき、母親が洗濯物を畳みながら、教科書から「ウサギは? 鉛筆は?」とクイズ形式で付き合ってくれたのだが、一向に英単語を覚えられなかった。何度か繰り返すうち、そばでマンガを読んでいた弟が「ラビット! ペンシル!」と横から答えるようになったものだから、私は怒って弟とケンカ。母からは「覚えないあんたが悪い」としかられ、散々な目に遭った。

中学の恩師が教えてくれた鉛筆読み

それくらい自分の記憶力に自信がない私は、中学の恩師がかつて教えてくれた鉛筆読みというのを、大学受験に向けてやってみた。鉛筆を一定の速度で動かし文字をなぞりながら、英単語の参考書を読む方法だ。この方法だと、1冊1時間くらいで終わってしまう。

この方法では、当然ながら1回目は覚えられない。しかし不思議なことに、2回目の鉛筆読みをすると、なんだか見覚えのある単語がいくつもあるのに驚く。意味がわかるわけではないのだが、このページの左上あたりにこの単語があったのを見た記憶があるなあ、というのがいくつもあるのだ。「俺の記憶力、大したもんじゃないか?」という気がしてくる。3回目に突入すると、たまに意味のわかる単語に出くわすようになる。鉛筆読みでさっと眺めているだけなのに意味がわかるなんて、すごいじゃないか! とうれしくなる。

こうなると、鉛筆読みが楽しくなってきて、1冊1時間で読み通す作業を、何度も何度も繰り返す気になる。そもそも記憶できるのが不思議に思えるような方法でやっているから、覚えていなくて当然なので、覚えていないことにショックを受けることがない。なのに不思議なことに、見覚えのある単語が回を重ねるごとにどんどん増え、意味がわかる単語も増えてきて、楽しくなってくる。楽しいと記憶力が働きやすいのか、より覚えやすくなる。

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