「部下が働かない」と嘆く上司の残念な考え方 自分で答えを出させないと仕事は覚えない

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記憶というのは、気まぐれなものだ。確実に覚えようとすればするほど、忘れやすくなる。どうも記憶というのはプレッシャーに弱いらしい。プレッシャーをかければかけるほど、覚えたはずのことが思い出せなくなる。

楽しく、興味が湧くように仕向ける

記憶力は自分のものだと勘違いしやすいが、記憶力ほど自分の思いどおりにならないものもない。思い出したいときにちっとも思い出せない、という経験は誰にでもあるだろう。記憶力は「他人」だと思ったほうがよい。そっぽを向いて機嫌を損ねたらちっとも覚えてくれないが、調子が出るとどんどん覚えてくれる。自分自身の記憶であっても自分の思いどおりになるとは考えず、「記憶力さん」と他人扱いしたほうがよいらしい。

部下の記憶力も、そういうものだとみなしたほうがよい。「これは確実に覚えろよ」と言ったって、本人にもどうしようもない部分がある。楽しく、興味の湧くことは、たとえば大好きなマンガのワンシーンのように、映像がありありと浮かんでくるほどしっかり記憶が刻まれるが、興味のないことはちっとも覚えられないのは、みなさん覚えがあるだろう。

『自分の頭で考えて動く部下の育て方 上司1年生の教科書』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

だから部下に仕事を覚えてもらおうと思うなら、楽しく、興味が湧くように仕向けるのがいちばんだ。そうすると仕事の覚えは早くなる。早くはなるが、確実に1個1個覚えていくというものではない。「前に教えただろう?」と言ったって、忘れてしまうのはどうしようもない。ある程度の忘却は織り込んで仕事を組み立てる必要がある。

私に学習計画を語ってくれた友人は、自分が単語を忘れてしまうことに気がついてショックを受け、以後の学習が嫌になってしまったらしい。こうなると、学習に対する姿勢が「仕方なし」、つまり受動的になってしまう。こうなると「記憶力さん」はなかなか頑張ってくれない。自分自身の記憶力さえ、まるで他人であるかのように「気持ちよく働ける」環境を整えないとうまく機能しない。ましてや、他人に仕事を覚えてもらおうとすれば、余計に「気持ちよく働ける」ことが大切になる。だから、部下に仕事を覚えてもらうためにも、部下の意欲を削ぐことになりかねない「答えを教える教え方」には要注意だ。

篠原 信 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員

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しのはら まこと / Makoto Shinohara

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員。有機質肥料活用型養液栽培研究会会長。京都大学農学部卒。農学博士。高校を卒業後、2年がかりで京都大学に合格。大学生時代から10年間学習塾を主宰。約100人の生徒を育てた。本業では、水耕栽培(養液栽培)では不可能とされていた有機質肥料の使用を可能にする栽培技術を研究、開発。これに派生して、やはりそれまで不可能だった有機物由来の無機肥料製造技術や、土壌を人工的に創出する技術を開発。世界でも例を見ない技術であることから、「2012年農林水産研究成果10大トピックス」に選出された。
 

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