【産業天気図・情報・通信業】端末買い替え期間長期化と販売台数鈍化で「曇り」、端末・サービス競争は新ステージへ

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   08年4~9月  08年10月~09年3月

急成長期から成熟期へ突入した携帯業界。通信キャリアだけでなく端末メーカーや代理店までもが構造転換を余儀なくされている。契約数が2007年12月に1億台を超え、買い替え期間の長期化、販売台数の鈍化がみられることから、08年度の事業環境は引き続き「曇り」。ただし、通信キャリアとして業界ピラミッドの頂点にある携帯大手3社の業績は「晴れ」となりそうだ。

キャリア各社とも、家族間無料など値下げ施策の浸透で音声収入は後退するが、データ収入は増加、割賦販売導入に伴う機器販売収入も伸びる。解約率の低下や代理店への支払い手数料削減がテコとなり今09年3月期は前期比営業増益となる見通しだ。シェアトップのNTTドコモ<9437>はロゴの刷新や既存顧客重視策を打ち出し、販社を一本化するなど社内体制再構築中。2位のKDDI<9433>は、未導入だった割賦販売プランを追加するほか、独自性のある端末開発に注力している。

一方、ソフトバンク<9984>は前期の勢いをどうつなげるかが課題だが、米国アップル社と提携し3GのiPhone(アイフォン)を7月から販売する。このほかイー・アクセス<9427>の持ち分法会社であるイー・モバイルやウィルコム(未上場)は、携帯端末だけでなくビジネス用スマートフォンやデータ通信カードで顧客獲得競争を繰り広げている。2台目需要や法人需要の開拓がどう進むかがポイントになる。

販売代理店の世界では、三井物産系のテレパーク<3738>と住友商事・三菱商事系のMSコミュニケーションズ(非上場)が10月に対等合併を予定し、断トツのシェアを握ることになる。財閥系3社が一緒に手を組むというのは、以前だったら考えられないこと。この大合併が引き金となり、販売代理店業界はさらなる再編が進みそうだ。

08年度最大の注目点となるのは、やはりアイフォンの売れ行きだろう。通信キャリア主導のもとで高機能端末がいち早く普及し、特異な発展を遂げた日本市場で、使い勝手やブランド力に秀でるアイフォンが、どれくらい消費者の支持を集めるのか。携帯OS(基本ソフト)に参入した米国グーグルといい、世界的なネット企業による携帯事業参入で業界が活性化しているのは事実だが、個性的な端末や特長あるサービスでの競争は熾烈になるばかり。動きが激しいだけに、各社とも経営の舵取りはますます難しくなりそうだ。

【高橋 志津子記者】

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