燃油高で休漁船続出 マグロ危機の深層
魚価高騰は一時的? 休漁は漁業全体へ波及
マグロ休漁の発表を受けて、取引価格にも影響が出始めた。5月末に三崎で水揚げされたキハダは「大型でキロ1050円と、それまでの平均より1割以上も値上がりした」(事代漁業)。現在の在庫がなくなるまで末端価格への影響は限定的とみられるが、秋以降に魚価高騰が予想される。漁業者にとっては一縷(いちる)の望みだが、築地市場でマグロを扱う水産業者は「極端に値上がりして、需要が落ち込まないか気掛かり」と懸念する。そのため相場高騰に否定的な声も聞かれる。「需要が落ちればモノが余り、相場は自然と落ちてくる」(水産業者)。値上がりは一時的で、やがて元の水準に戻ると言うのだ。魚価が上がらなければ、休漁しても漁業者の苦境は変わらない。
実は、燃油高の影響は、マグロだけでなく漁業全体へと及んでいる。6月5日、サンマやイカなど国内漁業12団体が、沿岸から遠洋まで一斉に休漁を検討していることが明らかになった。「現在の魚価では、日本の漁業は死んでしまう」(大日本水産会)。全国いか釣漁業協議会は6月18日から2日間、一斉休漁することを決定している。
「漁船用燃油の価格高騰分を支援してもらえるよう、水産庁へ要望書を提出する」(全国主要水産都市商工会議所連絡協議会)として、差額補填を国に求める動きも出てきている。しかし「差額補填は非現実的。原油問題なのでどうしようもない」と水産庁もお手上げだ。
たとえ休漁に入っても、マグロ漁船の場合、乗組員の人件費など経常的なコストは発生し続ける。休漁を機に、廃業が続出する可能性も考えられる。事代漁業の寺本社長は「マグロ漁業は国際競争にさらされている。このまま衰退し、日本の漁獲枠が減ってしまっては国益を損なう」と訴える。減船を重ねてきた日本のマグロ漁業だが、事態はいよいよ危機的状況になってきた。
(前田佳子 =週刊東洋経済)
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