今さら聞けない!「ドローン」は何が凄いのか ラジコンとの「3つの決定的な違い」とは

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たとえば、建設機械大手のコマツは、ドローン測量を使って建設現場全体を効率化しようとしている。通常、大規模な建設現場では、どこまで整地したのかを把握するために人が地上で測量しているが、それを上空のドローンが取得する3次元データで代替する。データはコマツのスマート建機に送信され、自動走行によって土木工事を進める。導入実証では、工期の短縮や人手の削減によって、費用を数割削減する効果があったという。

セキュリティ分野では、セコムが民間防犯用としては世界初となるドローンによる巡回システム「セコム・ドローン」を発表した。監視カメラとLEDライトを搭載したドローンが自動で施設内を巡回し、不審な車や人を検知すれば接近して写真を撮影する。画像はすぐにセコムのコントロールセンターに共有され、不審な点が認められれば、人を現場に派遣する。夜になるとショッピングモールや銀行の中をドローンが飛び回るSFのような世界は、そう遠くないところまできているかもしれない。

普及への課題は安全性の向上とインフラ整備

このようにさまざまな分野で活用が期待されるドローンだが、本格的な普及には安全性の向上と活用側のインフラ整備という2つの大きな課題を解決する必要がある。

ドローンに関する安全性の懸念が指摘されている例としては、フランスで原子力発電所上空をドローンが飛行する事件が相次ぎ、国がドローンを監視する仕組みの開発を始めていることがある。日本の場合、2016年4~10月中旬までの期間において、国交省のウェブサイトで公開されているものだけでも、全国で30件の事故が報告されており、中にはイベント撮影中の落下事故や電線への接触事故など、ひとつ間違えば大事故につながるような事例も確認されている(国交省への報告によると、人が負傷したり、停電が起こるような大きな事故は確認されていない)。

また、小型のドローンでも、重い機材や商品を乗せて飛ぶと数キログラムの重さに達するため、安全に飛ぶ技術が最も重要なのは言うまでもない。2015年4月に首相官邸にドローンが落下した事件の後、パイロットが見えない範囲にドローンを飛ばす「目視外飛行」や人口密集地における飛行を原則禁止する厳しい規制が設けられた。

現在、東京23区内で国交省の許可なしに200グラム以上のドローンを飛ばせる場所はほとんどなく、市街地における本格的な運用はまだ先になるという有識者も多い。ドローン1機1機に対して、ジェット機のように厳格な飛行安定性基準等を設けるのは現実的ではないが、障害物との衝突を自動で回避する仕組み(ディテクト・アンド・アボイド:DAA)や、有事の際に人がいない場所を自動で検知して着陸するシステムなどは今後、重点的に開発すべき技術である。

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