北陸新幹線延伸の「費用対効果」はどうなるか 敦賀以西の延伸ルートは「小浜・京都」に

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過去の新幹線開業事例では、産業連関表などに基づき、地元に及んだ経済波及効果も検討されてきた。ただ、この数字に、開業に合わせたインフラ整備や宿泊施設の建設など、いわば一過性の効果が含まれていることもある。

さらには、やはり一過性の要素が大きい観光面の「開業特需」をそのまま「新幹線効果」と短絡し、もっぱら「観光客の数が増えること」「少しでも多くの観光客が、少しでも多くのお金を使わせること」を「新幹線効果」と錯覚しているように見受けられる事例も目立つ。このような意識しか持ち合わせず、「これまでの視点や価値観をできるだけ変えたくない」という姿勢で開業に向き合うと、往々にして、「特需」の時期が終わるべくして終わった時点で「新幹線効果が消滅した」という悲観に自ら陥ることになる。

再開発が進んだ熊本駅前=2016年3月

人口減少社会で必要な“真の新幹線効果”とは、例えば本連載で紹介した新潟県・上越妙高駅前のコンテナ商店街「フルサット」、あるいは、青森市で生まれた高校生育成のNPO法人「クリエイト」のような各種のイノベーション、つまりは「新幹線抜きでは実現しなかったビジネスやライフスタイル」なのではないか。

地方や地域、都市は、新幹線を使いこなせるのか。人口減少社会において、新幹線が果たせる役割、新幹線でなければ実現できない社会や人の営み、暮らしはどのような形なのか。「数字の話」に加えて、ソーシャルデザインの視点を踏まえた、より踏み込んだ議論が欠かせないように思う。

整備新幹線、速度向上の行方にも注目

開業から9カ月目に入った北海道新幹線は、懸念された冬季の利用状況に関するデータをまだ入手できていないが、JR北海道が単独で維持困難な路線を公表するなど、鉄路の行方は不透明感を増している。

鉄道・運輸機構の事後評価報告書は、東北新幹線について「北海道新幹線開業による効果・影響については、今後も継続して追跡していく必要があると考えている」と記述している。他方、現在、最高時速260キロメートルに抑えられている整備新幹線の速度についても、「環境対策等の種々の課題はあるものの、今後検討する余地があると考える」と、将来的なスピードアップに含みを持たせている。

なお、先に本連載で紹介した、シンクタンク「ほくとう総研」を中心とする北海道新幹線研究会の報告書が今秋、ネットで公開された。この報告書をあらためて読み解きつつ、引き続き、各地の新幹線が社会をどう変えるか、ウオッチしていきたい。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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