新青森開業の約3カ月後に東日本大震災が発生し、東北新幹線は区間によって49日間もの運休、秋までの減速運転を余儀なくされた。東北新幹線の全線開業は、本来のインパクトを発揮することができなかったが、それでも、過去の大地震に比べれば短期間で復旧にこぎ着け、復興の大きな原動力となった。
総便益(利用者便益、供給者便益、環境等改善便益など)が合計7911億円と算出されたのに対し、総費用(建設費投資額、車両費、維持改良費)は7211億円となり、B/Cは「1.1」と、事業による効果がコストを上回った。他方、教訓として、
②東日本大震災の経験を踏まえた災害対策の重要性
③沿線地域の取り組みと地域間の連携
の3点を挙げている。
これらの評価結果に基づき、同機構は「地域間の交流人口の増加や沿線地域の賑わいが創出されていること」「新規事業採択時の想定値を上回る需要も発生していること」を根拠として、「本事業による効果の発現状況は概ね良好」と整理している。
九州新幹線の評価対象には「くまモン」誕生も
鉄道・運輸機構は、九州新幹線についても同様に
②博多-熊本間の利用者が約1.4倍、熊本―鹿児島間が約1.7倍に増え、その利用が定着している
③所要時間の短縮
④鉄道の輸送量増加
⑤経済波及効果
⑥熊本県のキャラクター「くまモン」の誕生と活躍
⑦観光入込客数の増加
⑧全線開業を祝う「祝!九州」キャンペーンの展開とテレビCMのカンヌ国際広告祭受賞
――といった効果をポジティブに評価している。総便益3兆308億円に対し、総費用は1兆4434億円、B/Cは「2.1」と、東北新幹線・八戸-新青森間を大きく上回る。
これらの内容が整理された事後評価報告書について、事業評価監視委員会による審議の結果、「主たる目的の達成状況が確認され、当初想定されていた整備効果は、概ね得られているものと判断する」との結論に達している。
単純比較はできないが、北陸新幹線の米原ルートは九州新幹線・博多-新八代間並み、小浜・京都ルートは東北新幹線・八戸-新青森間と同等の費用対効果となるわけだ。
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