「小浜・京都」ルートは、JR西日本も支持するなど有力視されてきた案で、時間短縮効果が最も大きく運賃も最安だ。B/Cは「1.1」と、かろうじて効果が費用を上回る。他方、「舞鶴」ルートは、遠回りとなる分、コストがかさむ上に時間短縮効果が小さく、B/Cが「0.7」にとどまる。経済効果がコストを下回り、着工の前提を満たさない格好だ。
各紙報道によると、京都府は独自にB/Cを試算した結果、舞鶴ルートが「1.0」を上回るとの結論に至り、11月末、国会議員で構成する与党検討委員会に示した。京都府は「基本計画路線」にとどまっている「山陰新幹線」の着工も求めており、舞鶴ルートを前面に出す姿勢は、その布石という意味合いも強いようだ。
東北新幹線は「おおむね良好」
さて、鉄道・運輸機構による評価作業に目を転じよう。
整備新幹線の評価作業は、新規着工に際して国土交通省が「新規事業採択時評価」を実施している。また、同機構は、着工から5年ごとの「再評価」と、工事完了から5年以内の「事後評価」を実施し、「事業評価監視委員会」が内容を確認している。
2015年度はちょうど、東北新幹線・八戸-新青森間と、九州新幹線・博多-新八代間の事後評価の対象年度に当たっていた。整備新幹線の2路線がそれぞれ、全線開業から5年目を迎えた節目の年度だった。同機構は各種データの評価に加えて、2015年度はJR東日本とJR九州、八戸市、熊本市などにヒアリングを行っている。このほか、それぞれ開業2年目には、沿線全域でヒアリングを実施したという。
詳細な結果は、同機構が2016年春にネットで公表した報告書に譲るが、東北新幹線の場合、主な指標・視点として
②新幹線利用者数の増加
③所要時間の短縮
④鉄道輸送量の増加、輸送安定性の確保
⑥経済波及効果
⑦観光客入込数の変化
⑧自治体の取り組み
⑨工期短縮・コスト削減への取り組み
――などに着目して評価を行った。
その結果、総合的にみて、東北新幹線の全線開業によって、費用に見合うう一定の効果が得られたと整理している。
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