「AmazonGo」はショッピングの革命となるか レジ待ち行列が不要になるスゴイ仕組み
前述のとおり、これまでの体験は、商品を選んでレジで商品をスキャンして、会計を済ませるというものだ。しかし商品を選ぶ段階で顧客が何を持っているのかを認識させてしまえば、レジでスキャンする二度手間を踏まなくて済む。そこで、コンピュータビジョンとRFIDなどのセンサーによって、店舗内で、誰が、何を手に取ったのかを記録し、そのまま店外に持ち出そうとするときに決済される仕組みを作り上げたのだ。
もちろん日本でも、買い物カゴに入れるだけで商品を認識する仕組みや、回転寿司店のように皿にRFIDが入っていて、食べ終わると瞬時に会計金額がわかる仕組みは存在してきた。
Amazon Goは、よりユーザー側に負担をかけない形、すなわち自然な店舗内設計と自然な顧客の振る舞いを壊さないまま、未来のショッピング体験を実現させている点が面白い。
そして、これにはほかにも進化の可能性も秘められている。
決済ではなく購買体験へシフト
これまでショッピング体験とテクノロジーの発展は、決済部分にフォーカスされてきた。ネット決済の巨人であるペイパルはブレインツリーを買収し、 モバイル決済市場が大きく注目された。スクエアは決済サービスから中小企業のファイナンス分野へと展開している。オンラインではベンチャーキャピタル「Y Combinator」が出資するストライプが事実上のデファクトスタンダードを獲得しており、アップルはApple Pay普及に腐心している。
Apple Payとアプリによって、米国のアップル直営店での決済体験は変わった。顧客は店頭に置かれている周辺機器などについて、Apple Storeアプリでスキャンし、Apple Payで支払いを済ませれば、店員と話すことなくそのままカバンにしまって持ち出すことができる。
アップルは、Amazon Goの一歩手前のような体験をすでに実現しているが、本質的にはまったく違う経験だ。
店舗では店員を通じて決済を行っている人もおり、またセルフレジのような什器もないことから、手元のスマホで決済を済ませて商品をカバンにしまうさまは、どうしても万引きをしている気分をぬぐえない。実際、決済作業の一部始終を見ていなければ、万引きか正当な購買か、見分けがつかないだろう。
筆者も多聞に漏れず、店員に一声かけないと疑われるのではないか、と心配で仕方ない。しかしその店員はほかの顧客対応で手いっぱいで、声をかけるには結局手が空くまで待たないとならない。気にしなければ別にかまわないのだが、気持ちよい体験というよりは、気が引ける体験だった。
Apple StoreでのアプリとApple Payによるセルフモバイル決済は、決済体験こそ確かに変えたが、ショッピング体験を変えているわけではないことがわかる。
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