日韓関係はトランプ政権下で劇的に悪化する

米国という「重石」がなくなる東アジアの悲劇

かつての大統領をみても、ジョージ・H・W・ブッシュの対中政策を激しく攻撃して対中強硬論を唱えたウィリアム・J・クリントンは、大統領就任後、逆に中国のWTO(世界貿易機関)加盟を積極的にサポートした。その後に登場したジョージ・W・ブッシュも、選挙期間中激しく中国をバッシングしたが、大統領就任後は「9・11」の影響もあり、中国との協調姿勢に転じた。オバマ大統領も「中国を為替操作国に認定する」と選挙戦を戦ったが、在任中にそれを実行することはなかった。

12月4日には為替操作と南シナ海問題で中国を批判したトランプだが、その対中政策が実際に形を整えるのは、米国大統領という“枠”との折り合いをつけたあとのことで、それまで実像がはっきりすることはない、とみるべきだろう。

オバマ政権はほんとうに「弱腰」だったのか

ただ、多少フライング気味に筆者の考えを述べておけば、米中のせめぎ合いは大国間が激しく奪い合う「三つの空間」――サイバーと海洋と宇宙――において、クールダウンするとは考えにくい。選挙戦で「強い米国」を強く訴えてきたトランプにとっても、大国同士の力関係を大きく左右しかねない「三つの空間」での圧倒的な地位の確保は、譲歩の余地のない争いとみて間違いない。

事実、米国と中国はこの「三つの空間」の支配をめぐり、巧妙に正面衝突は避けながらも、世界各地で厳しい火花を散らし続けてきた。

オバマ政権は日本では「弱腰」との評価が定着し、中国がアジアの海で勢力を拡大させた問題の“戦犯”とまで位置づけられた。しかし、実はその裏側で、中国に対する包囲網を敷き、真綿で首を絞めるように中国を追い詰めてきた。

習近平指導部がそのオバマ政権の動きに対し、極めて強い警戒心を抱いていたことは、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の果たすべき狙いについて議論がなされるなかでも少しずつ明らかにされたが、それだけではない。

TPPによる経済的な「対中プレッシャー」に加えて、安全保障面では、フィリピンによるオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所への提訴と、その裏側で南シナ海において展開した「航行の自由」作戦。日本に対しては集団的自衛権行使を可能にする安保法制を求め、南シナ海にまで自衛隊を引っ張り出し、最後には中国への配慮から抵抗する韓国を抑え込んで、真の狙いは対中、対ロシアといわれるサードの配備を決めてしまったが、これらはすべてオバマ政権下のことである。

しかも未来の米国や米国企業にとっての大きな利益がアジア地域にあるという見極めのもと、軍事力をアジア地域に移す「リバランス政策」を打ち出し、着実に進めてきた。それを考えれば、日本の論壇がいかに単純な言葉を使い、オバマ政権の対外政策を軽んじてきたのかが、理解できるはずだ。

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