横須賀と藤沢、何が明暗を分けた理由なのか 地価、人口…住宅地としての魅力の差

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2012年には人口増加の著しい藤沢市に抜かれた(撮影:今井康一)

かつて神奈川県内においては長らく横浜市、川崎市、相模原市の3大政令都市に続く県内4番目の人口でしたが、2012年には人口増加の著しい藤沢市に抜かれました。

藤沢市の人口は1990年時点では約35万人に過ぎませんでしたが、2016年12月1日現在で約42.7万人まで増加。地価はといえば、高台の住宅地域では善行駅から徒歩5分程度の「善行1丁目」地区では今年1月1日時点で、1平方メートル当たり19万円で、この10年間で地価はほとんど落ちていません。海側の住宅街では、辻堂駅から海岸沿いに徒歩20分程度の「辻堂東海岸」地区で同23万円と、こちらは10年前から約3%上昇しています。

今年7月1日時点における過去1年間の住宅地の地価の平均変動率でも、横須賀市が0.9%下がっているのに対し、藤沢市は0.4%上がっている。この明暗の差は一体どこにあるのでしょうか。

空き家も目立ち、住民の高齢化も…

まずは横須賀市特有の地形の問題です。特徴的なのが谷戸(やと)地区。リアス式海岸のように谷が入り組む地域に開発された住宅地です。谷戸とは本来、「行き止まりの谷」のことを指します。明治初期に軍港関係者が入居する際に開発され、戦後は労働者住宅も整備されました。海を望む山間の集落には長い階段や細い路地が入り組みます。

横須賀市には全部で79の谷戸地区がありますが、空き家も目立ち、住民の高齢化も進んでいます。たとえば、週刊東洋経済が2014年8月に取材した時点では、谷戸地区の一つ、汐入町5丁目の稲荷谷戸地区ではおよそ5~6軒に1軒が空き家。これは全国平均(およそ7軒に1軒)よりも高く、住民の3割以上が65歳以上になっていました。行き止まりの谷にある集落に空き家が増えたことで、共同体としての機能を維持することが難しくなっているのです。

海を望む平坦な住宅地の馬堀海岸地区にも、固有の問題があります。「馬堀海岸駅」からも近く、横須賀市特有の起伏の影響もなく人気は安定しているかのように思えますが、海沿いの多くが「津波浸水予想区域」に指定されています。さらに横須賀市を含む三浦半島には5つの活断層が横断しており、大地震が発生した際の心理的不安感も小さくありません。実際に「先の東日本大震災の際には、馬堀海岸地区で購入契約中の戸建住宅のキャンセルも相次いだ」と地元不動産業者は振り返ります。

藤沢市も北部は起伏のある土地ですが、主要部となる藤沢市駅周辺を含む南部地域はほぼ平坦で住宅開発が進んでいます。2015年度の新築住宅着工を比較すると、藤沢市は4250戸に対し、横須賀市は2196戸と2倍近い開きがあります。

交通アクセスの違いも大きいでしょう。藤沢市との交通アクセスを比較すれば、品川駅までの電車での移動時間は、京浜急行「横須賀中央駅」から約45分、対する「藤沢駅」からは約40分でほとんど変わりませんが、藤沢市はJR線を中心に小田急線、湘南モノレール、横浜市営地下鉄線が市内を縦横に走り、バス便も市内中を網羅。市内の移動が便利でベッドタウンとして栄えてきました。

一方、横須賀市はメインの京浜急行のほかにはJR横須賀線がありますが、JR線は中心街から外れたエリアに各駅が配置されており、かつ都心への所要時間もかかるため利用客が少なく不人気路線となっています。

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