アコーディアvsレノ、5年越しの争いに終止符 USJ、コメダを買ったMBKと組み上場廃止へ

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一般に、多くの評価機関は、評価額の算定根拠の開示を徹底して嫌がる。買収価格はDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法で算出されるケースが大半だが、割引率などの数値を多少いじるだけで、簡単に結果が変わってしまう。過去の裁判では、現実にはありえない指標を使って、無理矢理評価額を引き下げた評価書を作成していたことが明らかになった例もある。

だが、フェアネスオピニオンが義務付けられると、評価機関としても安易に買収者の意向に沿うことはできなくなる。

実際、2006年5月の解禁以来、10年半の間に約330社がスクイーズアウト目的のTOBの対象になったが、買収される会社側の経営陣が、フェアネスオピニオンを取得した事例は、東京証券取引所による大阪証券取引所の買収案件や、KDDIによるジュピターテレコムの買収案件など、ほんの数件しかない。

今回のTOB価格のプレミアムは、公表日前日終値ベースで15%。過去のスクイーズアウト目的のTOBと比較すると、やや低め。さりとて、これ以上の価格は買収者側の予算と合わないのだとしたら、村上氏側にはこの価格で納得してもらうしかない。そこでフェアネスオピニオンということになったのかもしれない。

ファンド案件では異例の出資規模

アコーディアに対して、敵対的TOBを仕掛けると宣言した 神田有宏・PGMホールディングス元社長(2012年、撮影:今井康一)

買収するファンド側の出資額が大きいことも異例だ。スクイーズアウトでは通常、SPCが調達する買収必要資金のうち、資本勘定で調達する金額は最低限度に止め、残りは借入金の形で調達する。

その、小さな資本で多額の負債を抱えるSPCを、買った会社に吸収させるので、買収のための借金の大半は買われた会社にツケ回される。

結果、買われた会社のバランスシートは、貸方に巨額の借金、借方に自己のれんが加わり、悲惨な姿になる。買収者は少額に抑えた出資部分だけを転売していくので、利益が出しやすい。売る方も買い手を探しやすいし、買う側も再転売先をさがしやすい。会社が複数回転売された挙げ句に再上場と相成り、ツケは一般投資家に回された事例もある。

ところが、今回の公開買付届出書に記載された資金計画では、1500億円の必要資金のうち1125億円を、社債引き受けの形でアコーディアの生みの親であるゴールドマン・サックスが提供、残る400億円はMBKからの出資で賄うことになっている。

事業会社が事業会社を買う場合であれば、通常自己資金で購入するので、買収の際にSPCを使うこともなく、買収の際の借入金が買われた会社にツケ回されることもないが、ファンドが買収者でありながら、400億円もローンではなく出資で拠出するというのはかなり珍しい。

非公開化後もこの400億円の出資が維持されるとすると、アコーディアの有利子負債は862億円の残り462億円分増えて1000億円を超え、今期予想のEBITDA(減価償却前営業利益)116億円をベースに計算すると、現在はEBITDA 6.1年分だが、これが10年分に伸びる。とはいえこの程度であれば許容範囲だろう。

ゴルフ場経営は急成長が見込める事業ではないにもかかわらず、MBKがここまでするのはなぜなのか。もしも既に出口は決まっているのだとしたら、アコーディアの非公開化は新たなゴルフ場再編の始まりを意味するのかもしれない。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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