「大学付属校」受験の人気が高まっている理由 一貫校はエスカレーターではなくガラパゴス

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少なくない大学付属校で、内部進学資格を保持したまま他大学受験を認める制度を設けるようになってきている。一般入試による他大学受験は認めていなくても、内部推薦審査が行われる高3の12月くらいまでに結果が分かる推薦入試やAO入試などの特別入試であれば、受験してもかまわないというルールを設けている学校はさらに多い。

AO入試のような特別入試を受験するであれば、必ずしもいわゆるガリガリの受験勉強をしなくていい。学校での勉強の延長線上でAO入試に応募して、ダメなら系列の大学に行けばいい。

昨今は多くの大学でAO入試などの特別入試枠が増えており、他大学受験のハードルが下がっている。今後はさらに、大学付属校生にとっての選択肢が増える可能性もある。大学入試改革では、小論文や面接、集団討論、プレゼンテーションなどを入試に取り入れる方向性が打ち出されているからだ。

しかも、もとより大学付属校では、大学受験対策に時間をとられない分、自らテーマを決めて取り組むプロジェクト型学習や、論文指導、ディスカッションやプレゼンテーションの機会に多くの時間を割いている。卒業論文や自由研究などで時間をかけて取り組んだテーマを、そのまま小論文の題材にすることだって可能だ。

主に定期試験の結果をもとに付けられる高校3年間の成績が重視されるのは、AO入試などの特別入試でも内部推薦入試でも同じである。塾での勉強を中心にするのではなく、学校の勉強をしっかりコツコツこなす生徒が有利になる点で、付属校生にとってAO入試などの特別入試との相性はいいわけだ。

中学校や高校の時点で大学付属校に入学したからといって、必ずしも将来の進路が固定されてしまう時代ではない。内部進学と他大学受験の併願戦略が可能なのだ。

大学付属校は日本の教育における「ガラパゴス」

拙著『大学付属校という選択』の執筆のために、早慶MARCH関関同立の付属校77校について取材・調査した。大学付属校で学ぶことの利点はおよそ次の3点にまとめられる。

⑴大学の資金力・人的資源を利用できる……高機能な校舎、高価な教具の導入、広大な校地、充実した体育施設、大学教員による特別授業、大学キャンパスでの特別聴講制度、大学研究室での実験、大学図書館の利用、大学での資格試験指導、大学留学生との国際交流、大学生によるチューター制度、大学生コーチによる部活指導など。

⑵社会に出るまで一つの集団の中で育つ……一生の友人、強い帰属意識、理念の浸透、同窓会組織の結束など。

⑶内部進学制度で大学に行ける……幅広い教養教育、探究型学習/プロジェクト型学習/アクティブ・ラーニング、実用英語、国際交流・留学、大学範囲の学び、部活や行事や趣味への没頭、大学以降の具体的プランなど。

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