「大学付属校」受験の人気が高まっている理由 一貫校はエスカレーターではなくガラパゴス
ただしこれらは落とし穴にもなり得る。「両刃の剣」だ。拙著の中では、この「両刃の剣」について、正と負の両面から考察した。そのうえで、この「剣」は今後一層の輝きを放つであろうと私は予測する。理由は次の一言に集約できる。
「ミスを恐れない教育」。
これこそが大学付属校で学ぶことの最大の価値だと私は思う。一般に付属校出身者は、外部受験者よりも「学力」が低いと言われる。逆から見れば、受験という機会が日本の子供たちの「学力」を引き上げている証拠だとも言える。しかし今その学力観そのものが変わりつつある。
減点法の社会から脱却するために
日本の大学入試は、公正平等であることを追求したがゆえに、1点2点を争う競争の舞台となってしまった。そしてその論理に、高校教育が絡め取られ、中学校教育が絡め取られ、中学受験勉強が絡め取られていった。
どんなに頑張っても100点満点以上はない。より多く得点することよりも、人と違うことができることよりも、大事なのはミスをしないこと。しかも学歴社会の中では、一発勝負の入試本番でのたった1つのミスが人生を大きく左右することになる。この構造が減点法の社会を成立させている。
その「ゲーム」に勝利する者の条件が、処理能力が高く、忍耐力があり、与えられた課題に対する疑問を抱かないことであることは、拙著『ルポ塾歴社会』(幻冬舎)で描いたとおり。そのナンセンスを是正するために今、大学入試改革が検討されているわけだ。
しかし大学付属校の教育は、もともと大学受験には規定されていない。ミスを恐れなくていい。勝ちも負けもない。大学付属校で正しく学んでいる限り、減点法の価値観に侵されることはない。「エスカレーター」と揶揄されながらでも、受験競争の猛威を子供たちに寄せつけなかった。その意味で、大学付属校は日本の教育におけるいい意味での「ガラパゴス」と言ってもいいだろう。大学付属校の教育に、大学入試改革のヒントが見出せるかもしれない。
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