若い世代が「マジでもらえる年金」はいくらか 「現役時の手取り」と比べてどれだけ落ちる?

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さて、将来の公的年金がどの程度あてにできるかを検討する上での基礎資料は、「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し・—平成26年財政検証結果-」(厚生労働省、平成26年6月3日)だ。

この財政検証では、将来の経済前提を「ケースA」から「ケースH」まで8ケース検討しており、「ケースA」〜「ケースE」までは「所得代替率は50%以上を維持できる」とされてきた。

ところが、先の2013年度の「インチキ」所得代替率を、手取りベースの計算で、つまり生活者にとっての「正味の話」として計算し直す“掛け目”を50%に当てはめると、これは(倍率が0.86だから)43%になってしまう。「安心!」とはとても言えない数字である。

それでは、厚労省の「平成26年財政検証」で最悪のケースであると同時に、それなりのリアリティがあり、国民としてはこの程度は想定すべきである「ケースH」ではどうなるかというと、「仮に、機械的に給付水準の調整を続けると、国民年金は2055年度に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行。その後、保険料と国庫負担で賄うことのできる給付水準は、所得代替率35%〜37%程度」とされている。

毎年「マジでもらえる年金額」はいくらなのか

「現役世代の35%〜37%では苦しいなあ」と思うかも知れないが、このさらに0.86倍くらいを想定しなければならないので、「現役世代の可処分所得の30.1%〜31.8%」が新たな想定値となる。

読者には、たとえば拙稿「毎年マジで貯めないとヤバイ金額はいくらか」を参考に、概算ではあっても「老後のために必要な貯蓄額」を計算してみてもらいたい。この際の年金額の想定として、厚生年金ベースの勤労者で公的年金の受け取りが20年以上先に想定される方には、せいぜい今後の可処分所得の3割程度で計算を行って欲しい。

個人の場合、企業年金(母体企業が補填する)や公的年金(政府が何とかしてくれる)のように必要な資金が足りなくなった場合に誰かが何とかしてくれることを期待できない。従って、計画には余裕を持たせるべきだし、試算を間違える可能性がある場合はなるべく保守的な方向に間違えるように心得ておかねばならない。

このようなことを言うと、個々人が貯蓄を増やして景気が悪くなるかも知れないが、全体の景気のために個人が自らのライフプランニングを過大なリスクに晒すべきだ、とは言えない訳で、いわゆる「合成の誤謬」を時には逆の方向から見てみることが大切だ。もちろん、デフレを脱却するための財政・金融政策(最近優先順位が変わったかも知れない)と、優しくて同時に効率的な分配政策を実現する必要があることは言うまでもない。

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