ヘッジファンドが作った相場はいずれ崩れる 米ドルも日本株も割高だと言わざるを得ない
しかし、この水準(114円台)は、実はとてつもなく割高である。筆者が計算している日米実質金利差からみた、ドル円の適正水準は105円半ば程度である。現在の米長期金利の上昇を加味しても、せいぜい107円台半ば程度が妥当ではないか。
とすれば、現在のドル円は「7円から9円程度も割高」と判断できる。
実質金利を計算する上で、重要なポイントとなるのが、長期金利であり、消費者物価(CPI)である。CPIの動向は原油価格の変動で説明できる。ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁や日銀の黒田総裁は、量的緩和などでインフレにしようとしたが、目標を達成することはできなかった。
なぜか。それは、金融政策ではインフレにすることはできないからである。特に黒田総裁が推し進めてきた政策や考え方は、結果が出なかったことからもわかるように、残念ながら正しくなかったということになる。
それはともかく、「今後も米長期金利が上昇すれば、ドル高は肯定される」との指摘もあるはずだ。しかし、原油高のCPIへの影響は、米国がほぼ直接的に出てくるのに対し、日本では半年から1年後に出てくる。したがって、原油高はむしろ実質金利差の縮小につながり、ドル高是正の動きを加速させることになる。これは、ドル建て原油価格の上昇とドル安が共存する通常の相関関係の状態にも合致する。最近はドルと原油価格の動きに相関がなくなっているが、これはあくまで一時的な現象であろう。
結局、「今の日本株も割高」
一方、ドル円が割高だとすれば、結局のところ「日本株も割高」との判断にならざるをえない。7月29日の日銀金融政策決定会合で、日銀はETF(上場投資信託)の買い入れ増額を決定し、現時点も継続して買っている。
その結果、ドル円と日経平均株価が「上方へ」と修正されたかもしれないが、それでも「両者の関係」そのものは続いている。仮に上記のように、ドル円が理論値の水準である105円台半ばだとすれば、日経平均株価の適正水準はおおむね1万7250円程度になる。
このように考えると、1万8500円に近づくような動きは、明らかに「需給による買い上げ」が原因であり、理論的には現段階の水準は相当割高との判断になる。
確かに多くの主要輸出企業の下期の想定為替レートが105円以下に設定されているようだ。これを基準にすると、現在の為替相場が続けば、相応の上方修正期待が高まるとの指摘もある。しかし、それでも現在の株価はすでにそれらを十分すぎるほど織り込んで、なお割高ということになる。
もし海外情勢が不安定にならず、輸出が堅調を維持すれば、日本の輸出企業の増益も期待できるかもしれない。だが、為替水準から見ればその幅はきわめて限定的になると考えられる。
元来、11月から12月は従来から株価は上昇しやすい時期である。そのため、年末まで上昇基調が続くとの期待感も高まりやすい。また、日本株に対する強気な見方も復活しつつある。海外でもトランプ氏が大統領選に勝利したことで、これまでの戦略を完全に反転させ、「米国株買い・金売り」を進めているヘッジファンドも少なくないようだ。
だが、彼らが「目先の利益獲得を目的に作り上げた相場」が、いつまで持つかは不透明だ。彼らが「利益確定」と手仕舞いをすれば、簡単に崩れることもあり得る。
トランプ氏の勝利後、ここまで急ピッチで上げて来たわけだが、これからどうすればよいのか。市場参加者も、そして市場自身も迷っているはずだ。来年1月20日に行われる大統領の正式な就任までの期間、さまざまな思惑が交錯しながら、投資家はそれぞれの判断を下すことになるだろう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら