一つ目はトランプ氏の保護主義政策である。同氏は11月21日、国民に向けたビデオメッセージをリリースした。「就任後の100日計画」として、(1)貿易、(2)エネルギー政策、(3)規制、(4)安全保障、(5)移民、(6)倫理、について政策を語った。具体的な政策がやや明確でない項目もあったが、最もハッキリしていたのは環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退である。
トランプ氏がTPP問題をどう扱うかは、今後の通商、通貨政策をみるうえで重要な試金石とみていたが、同氏が「就任とともに即時脱退を表明する」と述べ、この問題について一切譲歩しなかったのは意外だった。市場では大統領選後の勝利宣言スピーチを受けて、同氏の保護主義政策も徐々に後退するのでは、との期待が高まっている。しかし、今回のビデオメッセージの冒頭に同氏が述べた「アメリカ第一主義があらゆる政策のベースになっている」という言葉こそが、本心とみるべきだろう。
選挙中「中国やメキシコ、日本が米国の雇用を奪っている」「日本や中国は不当に通貨安誘導してきた」などと述べてきたトランプ氏にとって、足元の急速なドル高は不本意なはずである。行き過ぎればいずれドル高をけん制し、ドルを押し下げるような発言をする可能性は高いだろう。
トランプショックが欧州にも飛び火するおそれ
二つ目に、今後欧州を中心に重要な政治イベントが控えている点も懸念材料だ。今年12月4日、イタリアで憲法改正を巡る国民投票が実施される。レンツィ首相は、国民が「ノー」と判断した場合には、辞任すると述べたため、今回の国民投票はレンツィ首相の信任投票という側面もある。
問題なのは、野党「五つ星運動」「フォルツァ・イタリア」「北部同盟」のいずれもが、ユーロ圏からの離脱を支持している点だ。レンツィ首相が辞任した場合は、しばらく政局不安が続くばかりか、これまでの財政改革などの構造改革が後退するリスクが高まる。
また、2018年春の総選挙で、仮に野党が次期政権を担うことになれば、いずれユーロ圏からの離脱を巡る国民投票が行われる可能性も高まる。報道によれば11月18日付のイタリア各紙掲載の世論調査では、改憲反対派が米大統領選をはさんで急増し、賛成派を7~12ポイント上回っているという。
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