「あまちゃん」大ヒットで注目増す大人計画 役者の売り込みに尽力した長坂まき子社長に聞く(上)

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矢口史靖監督、李相日監督…、映画は狙いを定めて挑戦

テレビドラマに比べて映画に対しては、大人計画でも苦手意識があったようだ。それでも長坂社長は、気に入った監督にはなんとしても使ってもらおうと気合いを入れてきた。矢口史靖監督作品の「ウォーターボーイズ」(2001年)に近藤公園を売り込んだときも、アルタミラピクチャーズの会社の扉にあった「水泳ができる男の子大募集」の張り紙を見て、長坂社長自ら動いたという。李相日監督の「フラガール」(2006年)では、池津祥子が子持ちのフラダンサー役をつかんだ。李監督とは、メジャーデビューとなった「69 sixty nine」(04年)で宮藤が脚本、星野源が出演したほか、「悪人」(10年)に松尾スズキが出演している。中島哲也監督との縁も深い。「下妻物語」(04年)での阿部サダヲと荒川良々、「嫌われ松子の一生」(06年)での宮藤官九郎と荒川良々なども存在感が強かった。

――映画への売り込みでは苦手意識があったのでしょうか。

映画は、何かの都合で延期になりましたとなると、スケジュールが空いちゃいますから。慌ててほかの仕事を営業して探すわけですよね。埋めなければいけない。

――でも、矢口史靖監督、李相日監督、中島哲也監督と、大人計画との縁が深い映画監督はいらっしゃいます。

矢口史靖監督が大好きなんです。(「ハッピーフライト」(08年)では平岩紙、正名僕蔵が出演するなどしているが)最近、出していただけないこともあるので寂しいです。李相日監督の「フラガール」のときは、池津(祥子)も三宅(弘城)も面接していただいて、決めていただきました。三宅(弘城)も池津も出させていただいて、すごく幸せでしたね。中島哲也監督とはCMで何本かご一緒したところから、お世話になっています。CMも映画作品も本当に面白いですよね。

よく作品を拝見している監督で、売り込むときに「絶対ハマる」という確信がある場合と、不勉強であまり作品を拝見していない監督で、「いかがでしょう?」と半信半疑の感じがするときとでは、営業するときの心持ちは違ってきますよね。

もちろんいろいろな監督の作品を観るべきだと思いますし、自分の不勉強を反省したりはしますけれど、やっぱり自分の好きな監督とか、面白いなと思った作品をつくってらっしゃる方の作品にぜひ出させていただきたいという気持ちの強さみたいなものは、変わってきますよね。

――とはいえ、いい監督は次々と現れます。チェックするのも大変です。

子どももいるので、なかなか時間がなくて。大人計画の俳優が出演している映画と舞台を観るだけで結構いっぱいいっぱいになってしまいます。なかなか新しい知識がなく、たとえばほかの社員に聞いたりすることもあります。あと、宮藤とか松尾とかは、それこそ山のように映画を観ているので、聞いたりすることはありますね。

後編に続きます)
 

山内 哲夫 東洋経済 記者

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やまうち てつお / Tetsuo Yamauchi

SI、クラウドサービスなどの業界を担当。

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