「アドテク」はメディアを破壊する怪物なのか 広告テクノロジーとメディアの熱い戦い
「かつては小規模な(取引上の)提携先だった企業が、いまや完全に我々を顧客から引き離し、広告の選択と配信をコントロールする権利を奪っている」と、英国の全国紙でプログラマティックディレクターを務める匿名希望の人物は述べている。「我々は怪物を作り出した。そしていまや、その怪物が我々より大きな影響力を擁している」。
英DIGIDAYでは、さまざまな全国紙や雑誌のパブリッシャーに、彼らがもっとも懸念していることを尋ねた。すべての人には匿名を条件に語ってもらっている。彼らから出た主な意見をこれから紹介しよう。
失われゆく信頼関係
パブリッシャーは、大規模なところもごく小規模なところも、さまざまな理由から、アドテクが設定する「アジェンダ」を以前よりも疑いの目で見るようになった。なかでも重要なのは、力関係の変化だ。
「プログラマティックが登場しはじめたころ、パブリッシャーは、提携を深め、コントロールを拡大し、ビジネスの価値を高められると期待して、アドテクに参入のきっかけを与えた」とある全国紙のプログラマティック責任者はいう。これはたしかにうまくいった。パブリッシャーは、アドテクとの提携による直接的な成果として、ノドから手が出るほど欲しかった追加収入を得られるようになったのだ。
この幹部は、そのころの提携関係を「ワニとワニチドリ(ワニの歯につまった食べかすをついばんでキレイにする習性で知られている)」の関係になぞらえた。両者が互いにメリットを享受し、幸せに共存共栄できたからだ。
だが、いつしかこのバランスが崩れ、その状態が定着してしまった。「パブリッシャーとアドテク企業にとって、不合理な状況が拡大していった。まるで、血を吸うヒルのカラダがどんどん膨らみ、血を吸っていた相手の体より大きくなったかのようにだ」と、この幹部は語る。
「その結果、我々はアドテクのアジェンダを大いに疑うようになった。彼らのアジェンダは、短期的なビジネス上の利益をひたすら追い求めることが目的となっていることに、我々は気づいたのだ」