子どもに「自分はダメ」と思わせる親の言葉 うっかり「誤った声かけ」をしていませんか?

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たとえば、ホームルームや総合的な学習の時間を使って

『「図書室では話してはいけない」って本当?』

という問いを生徒たちに投げかけます。

当たり前に感じる(思考停止している)今あるルールに疑問をもたせるのです。そして賛成、反対のそれぞれ立場にたって議論させます。すると、「図書室は静かに本を読む場所なのだから当然静かにすべきだ。走ったりおしゃべりしたい人は校庭に行けばいい」という賛成意見から、「市民図書館ならまだしも、学校の図書室はいろんな人が集まってくる貴重な場所なんだから、交流する場とすべきだ。本を静かに読みたい人は借りればいい」という反対意見も出てきます。

実は結論はどちらでもいいのです。子ども同士が話し合って自主的に運営されることが大切だからです。小学校高学年ならできるはずです。そして最終的に決まったルールには異論はあったとしてもみんな従おうという基本のルールさえあればよいのです。

どうしても大人が生徒たちの安全などを先回りして考えて、「押し付けるルール」が多いのが学校。これでは「自分の頭で考える」ことをしなくなってしまいます。自己肯定感を高め、自信を育むには、「自分たちで決める」というプロセスが重要なのです。

自己肯定感の低い日本の若者

『1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

このような小学校生活を経た子たちのその後の肯定感はどうでしょうか。実は中学、高校、大学で自己肯定感がより下がっていく傾向があります。

日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」平成25年度)によって、自己肯定感の度合いが調査されています。日本人の自己肯定感の低さは、ほかの国と比べても明らかです。

このデータの着目点は他国より自己肯定感が低いことだけでなく、学校生活を経るごとに落ちていっている点です。年齢層を学校で区切ってみると、中学、高校、大学に行くにつれどんどん肯定感が落ちて行っているのです。

今、社会で自己肯定感が着目される理由は、「チャレンジ精神」が必要とされるからです。肯定感が高い人は少々難易度が高い仕事でも「やればできる」と挑戦的な行動をとります。また周りとの関係性も良好なのでフィードバックが受けやすく、仕事の壁を乗り越えやすくなります。

市場の変化の激しいグローバル時代に必要な力が、旺盛なチャレンジ精神と自分で考えて行動する力です。新しい時代を生き抜く力をつけるために学校時代から自己肯定感を育成する必要があります。

そしてその第一歩は、テストをもって帰ってきたときの、あなたの一言なのです。

(構成:黒坂真由子)

永谷 研一 行動科学専門家、ネットマン社長

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ながや けんいち / Kenichi Nagaya

1966年静岡県生まれ。1999年ネットマン設立。学校や企業の教育の場にITを活用するサービスのパイオニア。行動変容を促進するITシステムを考案・開発し、日米で特許を取得。アメリカでO-1ビザ(卓越能力者ビザ)が認められた。行動科学や認知心理学をベースに、1万5000人の行動変容データを検証・分析し、目標達成メソッド「PDCFAサイクル」を開発。三菱UFJ銀行、ダイキン工業、シミックHD、トリドールHD、日立グループなど130社の人材育成プログラムに導入される。また子供たちの自己肯定感を高める社会活動を行っている。著書に『科学的にラクして達成する技術』や『1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート』などがある。

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