日本人は、「トランプ大統領」を甘くみている

過去の「トンデモ発言」には信念がある

 今回の選挙戦中、トランプ氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)を中止し、協定を破棄しないとすれば、再交渉を行うと誓い、北米自由貿易協定(NAFTA)も同様に破棄すると宣言した。NAFTAのせいで日本企業がメキシコに工場を設立し、米国に輸出するに至ったと言うのが彼の言い分だ。

その数カ月後、英エコノミスト誌とのインタビューで、トランプ氏は日本についての見解を詳しく述べ、米国が軍事同盟を結ぶ必要性に疑問を呈し、貿易不均衡と「雇用流出」について非難。なぜ米国が中国から日本を守っているのか理解に苦しむとして、こう述べている。

「米国が日本と結んでいる条約は興味深い。なぜなら米国がどこからか攻撃されても、日本には米国を助ける義務はないのだから。それでいて、もし日本がどこからか攻撃されたら、米国は日本を守らなければいけない。そんな取引を米国はしているのだ」

また、今年3月には、トランプ氏はニューヨーク・タイムズ紙の記者に「もし日本と韓国がさらなる自衛措置を行わなければならない事態が生じたとき、中国と北朝鮮に対処するために日韓が核の開発をしたとしたら反対するか」と質問されている。このときの同氏は、「核兵器拡散に反対」という長年に渡る米国の立場を捨て去ることにほとんど無頓着で、米国の状況次第では、「日韓の核兵器保有はあり得る」と答えている。

外交政策関係者はすでにトランプシフト

こう見ていくと、トランプ氏が米国と北東アジアの間で結ばれている同盟の歴史的な成り立ちについて、ほぼ無知であることがよくわかる。米メデイアでも指摘されてきたように、日韓が自国に拠点を置く米軍の支援に多大な貢献をしているのを、トランプ氏は無視している。さらに深刻なのは、東アジア全体の平和の維持と安定のために、こういった軍事力が果たす戦略的役割を、どうやら理解していないらしいということだ。

トランプ氏のこうした見解は、日本ではすでによく知られており、選挙中には米国の外交関係者らが、日本やアジア諸国の指導者・関係者に対して、「(トランプ氏やヒラリー・クリントン氏の言動は)選挙活動のために誇張されているだけ」と伝え、安心させる努力をしてきた。

彼らはもともと、クリントン氏が当選することを前提に動いていたが、選挙結果が判明した数時間後には、トランプ氏の「後援」にまわり、同盟国や友好国に対して「トランプはああ言っているが、結局は戦後の国際主義に戻る」と伝えると同時に、進行中の外交政策を共和党ベテラン勢に引き継ぐ作業を始めた。たとえば、知日派で知られるリチャード・アーミテージ氏は選挙中トランプ氏を批判していたが、すでに接触可能なトランプ陣営の高官たちに歩み寄ろうとしているようだ。

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