異次元緩和から3カ月,インフレ期待は上昇したか 市場動向を読む(債券・金利)

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日銀の岩田規久男副総裁は就任前、マネタリーベース残高の中核をなす日銀当座預金残高が10%増えれば、期待インフレ率が0.44%ポイント高まるという試算を示していた。黒田東彦総裁は、そのように物価上昇の期待が高まれば政策目標の達成は可能と説いている。

岩田副総裁はさらに、中央銀行が目標を達成すると約束したことが(目標達成に向けて)重要と強調している。つまり、黒田日銀がマネタリーベースの残高目標を約束どおり達成しようと努めていけば、期待インフレ率が高まり、ひいては物価上昇率も自己実現的に高まるということ。

だとすれば、大胆緩和による脱デフレの成否は、インフレ期待への働きかけが決定的なカギを握ると言える。この点、黒田日銀総裁は6月11日の記者会見で『家計やエコノミストへの調査などは期待インフレ率の上昇を示唆している』と指摘し、自信をのぞかせた。

インフレ期待を喚起した、という確証はない

黒田日銀総裁が念頭に置いているのは、消費動向調査とESPフォーキャスト調査(民間エコノミスト予測の集計)である。6月10日に公表された5月の消費動向調査によると、1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合<原数値>が0.3ポイント上昇の83.1と5カ月連続で増加していた。

同6日に発表された6月のESPフォーキャスト調査では、今回初めて集計された2015年度の消費者物価上昇率の平均予想が前年度比プラス1.0%だった。これは黒田日銀が「展望レポート」(4月26日)で示した同プラス1.9%の約半分という低レベル。ただ、13年度のそれは同プラス0.3%、14年度は同プラス0.7%と緩やかに高まっていく見通しになっている。民間エコノミストは、脱デフレが曲がりなりにも進行するという物価観だ。

債券市場参加者の期待インフレ率もごく緩やかながら上がってきている模様。代表例は固定利付債と物価連動債の利回り格差であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)。消費増税(14年4月にプラス3%ポイントを予定)の影響を除いたBEIは、昨年9月頃よりプラスに浮上し、足元では0%台後半の水準に高まっている。

QUICK月次調査<債券>におけるコア消費者物価指数の上昇率予想<平均値>も、アベノミクス期待を背景とする円安・株高基調の起点になった昨年11月以降、今後1年間」が0%台前半で、「今後2年間」が0%台後半で、「今後10年間」が1.0%台に乗せてそれぞれ強含みだ。

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