列車で「ゴジラ」を倒すことは本当に可能か 「シン・ゴジラ」から考える無人自動運転
その後、ATOは神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)を皮切りに、新交通システムで普及。保安や訓練を目的として運転士が乗務する場合もあるが、無人運転を基本とする路線も数多くある。
他方、鉄のレールを用いる鉄道でも、1977年の神戸市営地下鉄西神線以来、ワンマン運転を行う運転士の支援を目的として採用する例が増えた。つくばエクスプレスでは時速130キロメートル運転も実施されている。最近では、精密な位置での停車を目的として、ホームドアと共に採用する例が多い。
ただ、ほとんどのケースでは運転士が乗務しており、非常時や乗客への案内などに対応している。完全な無人運転は、福岡市営地下鉄七隈線などで目標とされてはいるものの、営業列車で実施している一般的な鉄道は、まだない。
最高速度で突撃させるための方法は
さて、ゴジラへの無人突撃を敢行した、JR東海の東海道新幹線、JR東日本の山手線、京浜東北線、中央快速線、上野東京ラインは、いずれもATOは採用していない。すなわち、既存のシステムのままでは、無人運転は不可能である。
鉄道の運行システムは、ATCがそうであるように、ほぼすべてが「日常時、非常時を問わず、いかに安全に停止させるか」を目的として構築されている。摩擦が少ない(それゆえエネルギー消費量が少ない)鉄の車輪とレールを用いている以上、加速より減速の方が数倍難しいのである。
これは「全速力、ノーブレーキで怪獣に突っ込む」などという非常識な目的とは、まったくの逆だ。運転士は発車ボタンを押し、前方を注視しているだけで、加速をも担うATOの方が、むしろ現時点では例外的なシステムと言える。
では、「シン・ゴジラ」の劇中では、どのような想定で無人列車爆弾を実現させたのであろうか。ATOを仮設したのか?
もちろんのことATOは、乗客の安全を保つためにスムーズな加速を行うようになっている。途中で脱線することなく(脱線してしまうと、他の列車も巻き込んで誘爆させる恐れがある)、東京駅付近で最高速度に達するようにするためには、通常の運転と同様、徐々に加速していくことが肝要となりそうだ。
しかし、加速ポイントとなる位置を特定するため、線路内には、「地上子」と呼ばれる装置を取り付けなければならない。決死の設置作業が行われたのか。
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