列車で「ゴジラ」を倒すことは本当に可能か 「シン・ゴジラ」から考える無人自動運転

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左から山手線・京浜東北線・湘南新宿ライン。爆薬を満載すればミサイルより強力な兵器になるか(写真:tarousite / PIXTA)

在来線の通勤型電車は1両150人、新幹線の電車では1両100人程度が「定員」。それだけの荷重をかけたとしても、十二分に走行可能な性能を持たされている。人間1人60キログラムとして、1両で6~9トン程度の物を積んでも、何ら問題はない。

もしそれだけの爆薬が用意できたとしての話だが、つまりは在来線の10両編成でも新幹線の16両編成でも、最大で100トン弱もの爆薬を抱え、最高速度でゴジラに突撃することが可能なのだ。その威力は計り知れない。アメリカ軍の巡航ミサイル「トマホーク」が搭載できる爆薬量は450kキログラム。大和型戦艦の46センチメートル砲弾(九一式徹甲弾)で同じく33.85キログラムであったから、まさにケタが違う。

鉄道の特長は「大量、高速、定型」輸送に適していることだ。日本のコンテナ貨物列車ならば、1000トン以上の物品を一度に運ぶことが可能である。海外の鉱物輸送列車では1本数万トンという例もある。また、新幹線なら時速200キロメートル以上、在来線でも100キロメートル以上という高速で走れる。飛行機ほどではないが、目標に対して速やかに接近することも期待できるのだ。

東京駅付近の線路上で停止したゴジラに対してという極めて特殊な条件下ではあるが、列車の兵器転用は、SF作品としてのリアリティに満ちた、秀逸なアイデアであったと感じる。なお、なぜ航空攻撃ではダメだったのかという点については、キチンと伏線が張られている。

無人運転は本当にできるのか

昨今は自動車の無人運転の研究が進み、公道上での実験も、2017年をメドに神奈川県や仙台市内に設定する特区で実施される見込みという。

一方、鉄道は固定された軌道のみを走行するため、自動運転にはなじみやすい。無人・自動運転を行うための運転保安システムは「ATO(Automatic Train Operation)」、日本語では「自動列車運転装置」と呼ばれる。名称の上から「ATC(Automatic Train Control・自動列車制御装置)」と混同されやすいが、ATCが列車の減速および安全な停止を制御するのに対し、ATOはATCの機能に加えて、列車の加速、走行も自動的に行うために構築されたシステムと説明できる。

ATOを実際の営業用鉄道に装備した例は、国内では1970年の日本万国博覧会における、場内を一周するモノレールが始まりだ。それ以前、1962年からは営団地下鉄日比谷線にて、2本の列車に限り長期試験が行われたこともあるが、実用化はされなかった。

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