三越伊勢丹HDと消費の関係を分析する アベノミクスと「一蓮托生」?の百貨店業界

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次に、貸借対照表(バランスシート)を見ていきます。「資産の部」の下にある「資産合計」を見ますと、前々期は1兆2279億円、前期は1兆2236億円とあるように、ほとんど変わっていません(同社連結貸借対照表10・11ページを参照)

ここで、「資産回転率」を計算してみます。「資産回転率」とは、「売上高÷資産合計」で計算される指標で、資産の有効活用の度合いを示します。これが高いほど、少ない資産から大きな売上高を上げているということです。

三越伊勢丹の「資産回転率」は、1.0倍。一般的には、1.0倍程度であれば、まずまず効率的に資産を運用できていると判断できます。ちなみに、製造業は1.0倍程度、ソフトウエアの会社だと2~3倍のところもあります。

短期的な安全性はどうでしょうか。「現金及び預金」は386億円。それに対し、月商は約1030億円ですから、現預金は月商のおよそ0.37カ月分しかありません。一般的に、大企業ならば1カ月分強の現預金を持っていると安全と判断されますから、これはそうとう低い水準です。しかし、百貨店などの小売業は日銭が入ってくる業種ですから、これでも十分回るのです。

もう少し詳しく見てみましょう。「受取手形及び売掛金」は、1107億円。企業間では、商品の仕入れやサービスのやり取りをする場合、現金決済はほとんどなく、「受取手形」あるいは「売掛金」として数カ月後におカネを受け取るのが普通です。一方、これと同じ理屈で、商品などを仕入れたものの、まだ支払っていないおカネである「支払手形及び買掛金」は1154億円計上されていますね。

一般的には、買い値(仕入れ値)より売り値のほうが高いことから、「受取手形及び売掛金」のほうが多いのですが、三越伊勢丹HDの場合は、「支払手形及び買掛金」のほうが50億円ほど多くなっています。ですから、「受取手形及び売掛金」、つまり未回収のおカネは、「支払手形及び買掛金」でファイナンスできているということです。現預金が少なくても回る理由は、ここにもあります。

もうひとつ、注目したいのは、「資産の部」のうち「流動資産」の中にある「商品」です。これは商品の在庫のことで、538億円計上されていますね。月に1000億円売り上げていることを考えると、意外と少ないと思いませんか?百貨店は、委託販売も行っていますから、自社が持っている商品以外のものも販売しています。つまり、この「商品」に含まれていないものも売っていることから、百貨店が持つ在庫自体は、それほど多くないというわけです。

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