社員が幸せじゃない会社は疲弊しか生まない 「企業理念」は暴走させずに共有せよ

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では、肝心の理念のほうはどうでしょうか。電通の企業理念は、

「その手があったか」と言われるアイデアがある。
「そこまでやるか」と言われる技術がある。
「そんなことまで」と言われる企業家精神がある。
私たちは3つの力でイノベーションをつくる。
人へ、社会へ、新たな変化をもたらす
イノベーションをつくってゆく。

というものです。「そこまでやるか」「そんなことまで」を過大に解釈してしまうと、理不尽な長時間労働につながってしまうというのもうなずけます。しかし、最も大事なのはイノベーションをつくることでしょう。「そこまでやるか」は、誰も発想できなかったアイデアや技術を生み出すという意味であり、根性を出せと言っているわけではありません。理念の先に会社と社員の幸せがあるということが共有できていないと、歪んだ解釈がどんどん拡散してしまうのではないでしょうか。

評価で社員間の優劣や賃金に格差をつける人事評価制度は、理念の共有を生み出せません。経営理念や行動理念、人事理念を掲げる会社は多くありますが、社員一人ひとりに浸透、実践できるかどうかがポイントです。

会社の理念やビジョンに合わせて、スタッフ個人の夢や目標についても上司、会社とすり合わせた人事評価制度が実現できれば理想的です。どんなにプライベートを充実させようと、一日のうちで最も長く過ごすのは、結局は会社。働くことが自分自身の目標や夢のためになるという意識を持ってもらわないと人は本来の力を発揮してくれません。逆に、仕事が将来の自分自身の目標の実現にプラスになると実感できれば、苦しいときでも頑張れるはずです。

採用時のビジョン提示でミスマッチはなくせる

これを新入社員の採用にも反映できれば、ビジョンに沿わない人は入社しないという状況になっていきます。自分の夢と会社の理念やビジョンをすり合わせ、確認したうえで入社してもらえるからです。その点、電通がこのようなステップを踏んで新卒社員の選考を行っていたようには見えません。

大会社ほど経営側と人事部側との乖離が激しく、理想の人材像を共有しきれていないという実態があります。理念やビジョンにそった人材像を明確にし、経営と人事が一体となった採用活動を行わなければ、意識やスキルがバラバラな新入社員を集めてしまいます。それでは会社の成長が望めないし、やる気を維持できない社員がギブアップしてしまいます。

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