「深夜食堂」監督が極めた人情噺と料理シーン

「冒頭で作る豚汁は撮影のたびに作ってます」

――その人気の秘密もやはりおいしそうだな、食べたいなというような食事の見せ方もあったのではないでしょうか。

基本的には、料理をする手だけを映すシーンも、マスター役の小林薫さん本人に料理をしてもらって撮影しています。冒頭の豚汁を作るところも本人にやってもらっています。やはりそこがみんなの見たいところだし、こういう題材だからこそ、本人が作るという見せ方を自分の中で課したということですね。

トマトを置く位置にもこだわる

「マスター」役の小林薫さんが実際に料理を作っているところを撮影している ©2016 安倍夜郎・小学館/映画「続・深夜食堂」製作委員会

――料理を作る過程が見られるのも、食欲をそそられます。

それと音ですよね。具材をフライパンに投げ入れた時の油の音とか、そこはこだわりますよね。やはりこういう題材だから生まれた描写。ただ最初は恥ずかしかったですよ。料理番組じゃないんだから、卵はこうやってひっくり返しますよとか、そういった手順の描写を自分がやる必要があるのかと思ってましたよ。ただ一方で現場ではすごくいい匂いがするわけですよ。こういう題材では、人間模様には直接関係ない、料理を作るという直接的な描写がアクセントになる。だからこそ冒頭で豚汁を作る過程というのはいまだに変わりませんよね。あの映像、毎回撮り直しています。ちょっとずつ違っているんです。味噌だって変えています。

――そこはフードスタイリストの飯島奈美さんが決めているんですか。

いえ、僕が決めます。合わせ味噌がいいとか、色合いはこれがいいとか。どうしてもこれだけ長くやっていると、自分の中でもこだわりが生まれてきますね。例えば料理の分量に対する皿の大きさとか、盛り付けをする時にキャベツとトマトがあって、そのトマトはどちら側がいいかとか。

――松岡監督はどちら派ですか。

僕は右側に置く派ですね。そしてその時に、マヨネーズをどこにキュッと盛るか。そういうのが重要だし、こだわるところです。

――映し出されているのは日本の食事なのに、それがアジアを中心とした世界各国の人たちに人気なのが面白いところです。

本当に不思議ですよね。本来は日本独特の、日本人にしか分からないはずのこの懐かしさ、郷愁をアジアの人たちが感じているわけですから。何でなのか、外国の人に聞いてみたいところです。

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