「イジメと戦争」はこの世から絶対に消えない それでもタモリさんと考えた、唯一の解決法

拡大
縮小

背筋がゾクッとした。

この言葉は僕の胸に深く刺さって、生まれて初めて『戦争』と真剣に向き合うこととなった。

どうやら僕らは信じられないぐらい残酷な仕組みの中に生きている。でも、僕らには知恵があって、問題がある以上は必ず答えがあって、なにより、「システム上、戦争はなくならない」と断言してしまう結論はあまりにも寂しい。

そういえば、以前、テレビ番組で谷川俊太郎さんが「『戦争はなくならない』というところから考え始めたら、なくし方が見つかるかも」と言っていたな。タモリさんと同じ考えだった。

僕らにできることとは

『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』(書影をクリックすると、版元のサイトにジャンプします)

あの夜から、ずっと考えていた。分かりやすくするために規模をもう少し小さくして、友達関係のこと、親子関係のこと、ご近所関係のことから。

そして、数年後にようやく『オルゴールワールド』という作品の中で、僕なりの結論を出した。「なるほどな」とニコリと笑ってくださったタモリさんの顔を今でも鮮明に覚えている。

「僕らは戦争をなくすことはできないのかもしれないけど、止めることはできる」

答えは僕が子供の頃から信じているエンターテインメント。

ピストルの引き金を引かなきゃいけない立場の人間でも、笑っている時や、何かに感動している瞬間は引けない。引き金を引くのは、笑い終わった後や、感動し終わった後だ。

つまり、エンターテインメントが世界中の人間を感動させている瞬間だけは平和で、「だったら、その時間を長くすればいいじゃん」というのが僕の結論。

いつだって僕は自分のためにやっているんだけれど、そのことが巡り巡って誰かの救いになっていたりすることがある。

その延長で、きわめて短い時間であろうと、争いを止めることができるなら、そもそもそういう目的で始めたわけじゃないんだけれど、作り手冥利に尽きる。

極上の棚ボタであり、エンタメを作る僕らの希望です。

西野 亮廣 絵本作家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

にしの あきひろ / Akihiro Nishino

1980年、兵庫県生まれ。1999年、梶原雄太と漫才コンビ「キングコング」を結成。活動はお笑いだけにとどまらず、3冊の絵本執筆、ソロトークライブや舞台の脚本執筆を手がけ、海外でも個展やライブ活動を行う。また、2015年には“世界の恥”と言われた渋谷のハロウィン翌日のゴミ問題の娯楽化を提案。区長や一部企業、約500人の一般人を巻き込む異例の課題解決法が評価され、広告賞を受賞した。その他、クリエーター顔負けの「街づくり企画」、「世界一楽しい学校作り」など未来を見据えたエンタメを生み出し、注目を集めている。2016年、東証マザーズ上場企業「株式会社クラウドワークス」の“デタラメ顧問”に就任

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT