鳥取「弱小鉄道」を救ったIT出身社長の手腕 若桜鉄道再生の裏にあるマーケティングとは
若桜鉄道にとっては、関西のファミリー層や関東のこだわり中高年あたりがターゲットとなります。ターゲットを絞り込むことでライバルも見えてきます。関西の方が選ぶ旅行先は南紀や中部もありますから、それらの地域との差別化が必要です。また関東は、ライバルが日本全国の田舎となるので、なかなか獲得が難しくなります。
ターゲットが決まったら、勝ち方を考えます。
自社を取り巻く外部環境や自社の内部を「強み (Strengths)」「弱み (Weaknesses)」「機会 (Opportunities)」「脅威 (Threats)」 の4つに分けて分析することをSWOT分析といいます。SWOT分析で大事なのは先にターゲットを絞ることです。ターゲットが変われば競合先も強み弱みも変わってしまいます。こうして「お客様に競合先ではなく自分を選んでいただく方法」を突き詰めて考えていきます。
SWOTの基本思想、基本理念とは「強みを強化せよ」である、と私は思っています。弱みは直さない。弱みを直したところで「普通」になるだけですから、勝てません。むしろ強みを生かして弱みをカバーすべきなのです。
「強み」を伸ばす実例
そして「機会」をつかみ、勝敗を変える。環境が変われば勝負のルールも変わります。また、今までの武器で負けていたなら、武器を変えましょう。
若桜鉄道では、2014年に「お買い物列車」を走らせました。JR鳥取駅前の百貨店などと連携し、専属のコンシェルジュが列車のお客様をお買い物にご案内する特典がついています。若桜駅から鳥取駅まで、直通列車でおよそ50分です。
このお買い物列車をSWOT分析してみました。お買い物列車を企画した目的は、鳥取市中心街の活性化と鉄道を利用する機会の創出です。ターゲットは沿線の買い物好きな女性に絞り、ライバルは自家用車での買い物としました。
この「買い物好きな女性」に、どうやって列車に乗っていただくか。それには、まず「強み」を伸ばします。
デパートでお弁当を買ったお客様には、デパートのご協力で缶ビールをサービスすることにしました。「お酒を飲んでも乗れる」という自動車ではできない、列車ならではの強みです。こうすればご主人も引っ張り出すことができるかもしれません。
お買い物列車は2日間だけ運行する特別列車に仕立てました。特別列車としてお客様を集約することで、仲間が集まりやすくなり、おしゃべりが弾みます。当社にとっては団体のお客様ですし、デパートの視点では、団体対応は個別応接よりも効率的です。また前述したように、デパートにコンシェルジュを起用していただきました。通販にはないデパートの魅力です。お客様はコンシェルジュに案内されることで、特別な接遇を受けていただけます。
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