台北故宮の現在の入場料は、個人の場合は1人160台湾ドル(1台湾ドル=約3.4円)だが、新しい入場料では250台湾ドルにまで引き上げられる。およそ1.5倍になるわけだ。10人以上の団体客になると、1人につき100台湾ドルだったのが、2倍以上の230台湾ドルへと跳ね上がる。大半の中国人観光客はこの団体枠なので、今回の値上げが中国人をターゲットにしたものであることがわかる。
ところが、この値上げによって本来はメリットを受けるはずの地元台湾人から、強い不満の声が上がった。あまりにも高くなり、行く気にならない、というのである。国会にあたる立法院でも議論になり、周知撤退のためという理由で値上げの実施は本来予定していた4月から7月15日にまで遅らせざるをえなくなった。
値上げは中国人には効かない?
台北故宮は、ロンドンの大英博物館、パリのルーブル博物館などと並んで世界の5大博物館のひとつに数えられる。その入場料が、本来、日本円にして500円そこらというのは日本人の感覚からすれば、いささか安いきらいがあった。
しかし、台湾は日本に比べて物価が半分以下のうえ、文化政策の方針で、台湾の博物館や美術館の入場料は一般的に低く抑えられており、100元を超えることはまずない。だいたいは30元とか50元ぐらいである。その中で台北故宮はもともと高いと思われてきたのに、さらに値上げとなれば、拒否反応が出ても無理はない。
そして、今回の値上げの原因となった中国人観光客について、値上げはあまり効果を生まないというのが一般的な見方である。
なぜなら、中国人観光客にしてみれば、台湾に来るのは一生に一度の大イベントであり、多少食事の質を落としても、あるいはツアー代に跳ね返っても、台北故宮を訪れたいからだ。訪問先から外すという選択肢はありえない。
しかし、台北故宮としても「中国人は1日に何人まで」という制限を設けるわけにもいかない。当面の対策として値上げを打ち出すしかなかったのだろう。
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