「円安」から「ドル高」に、ドル円は105円へ 市場動向を読む(為替)

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興味深いのは、その2月以降、ドル円は米ドルの通貨インデックスとの相関を急速に回復させたことだ。円安が始まった昨年10月以降、為替市場は円主導の「円安」相場の様相を呈し、ドル円と米ドル通貨インデックスの相関は低下していたが、2月以降は、ドル円は米ドル通貨インデックスが高い時には上昇、米ドル通貨インデックスが安い時は下落するようになってきたのである。

つまり、ここ2週間で100円を超えるドル高円安が進んできたのは、「円安」と言うよりは「ドル高」の側面が濃くなってきている。

このように、日本株やドル円の相場はそれぞれ米株、米ドルとの相関を再び強め、米国依存度を高めてきている。100円を超えるドル高円安は「価格正常化」の範疇を超え、従来の筆者の想定を上回るものである。ここで問われるのは、根本的に米ドルについて強気に見るのか、弱気に見るのかである。

2011年に長期で米ドルは底入れした可能性が高い

米ドルの通貨インデックスの長期的な推移をみると、2010年代のそれが1990年代のそれと多くの類似点を持つことに気づく。1990年代の動きを見ると、85年のピークから7年ほどが経過した92年に米ドルインデックスは底入れした。

米国でS&L(貯蓄組合)や3L(不動産、企業買収、中南米向け融資の不良債権問題)に係る金融不安が台頭。FRB(米連銀)が大胆な金融緩和に踏み切り、米ドルが下落すると思いきや、欧州で通貨危機が発生。米ドルは長期的な下げ止まりに転じた。

今回は2001年以降の長期的な米ドル安トレンドが、7年経過した2008年にリーマン危機という米国発の金融危機を発端に下げ止まりに転じた。欧州では90年代と同じく、通貨危機(ソブリン危機)が発生した。

さて、90年代は92年の底入れの後、95年まで3年ほど長期的に底這った後、米ドルインデックスは長期的な上昇局面に入った。その長期米ドル高トレンドは01年の今次局面のピークまで6年ほど続いた。①IT革命、②金融革命、③グローバル化によるニューエコノミーブームがその間の米ドル高の牽引役となった。

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