実は大赤字?自治体「東京アンテナショップ」 銀座の超一等地に店を出せるのはなぜか

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本当に地方食材などを東京で流通させたいのであれば、銀座などに置くのではなく、東京都内に展開している店舗への営業を行うのが基本です。銀座の一等地に店を構えても、1店舗での売り上げはどんなに頑張っても数億円程度。この売り上げを、置かれている数千アイテムで割り算したら、1地方企業当たりの売上などは雀の涙です。正直、経済的インパクトはほとんどありません。1つのアンテナショップに納めて偶発的な取引任せなんかにしてても成長はなく、例えば都内の5〜10店舗に営業をかけて、売り上げを作ってもらう努力のほうが本筋なのは、自明です。

官民とも「アンテナショップの幻想」から目覚めよ

東京のアンテナショップだけではありません。昨今では地方産品を、「ふるさと納税」による節税効果をもとにして、寄付者に実質安売りして提供したり、さらには海外への販路拡大という名目でアンテナショップを海外にまで進出させているところもあるのです。

ここまで来ると、自治体は税金を使って地方物産の商社業務でもやり始めるのか、と思ってしまうところです。しかし、そもそも商売をやるような組織ではない行政が、このような事業をやっても、結局は万年赤字です。税金がどんどん使われ続ける一方、地元企業がその経費以上に儲かって納税金額が拡大する、といった成果までは起きていません。

本気で商品を売り込みたいというのであれば、ちゃんと民間の卸会社やさまざまな店舗・ネットのバイヤーと付き合い、商品の魅力を伝え、売り込みをする。そして商品の問題点を指摘されたら改善していくという「当たり前なこと」と向き合うことこそ、本当の販路開拓です(地道にやっていらっしゃる民間の方、自治体の方がいらっしゃることも、存じています)。

一方、民間にも問題があります。当たり前の営業努力をせずに、税金で家賃のバカ高いアンテナショップを開くようなところに、うまいこと話をつけて商品を置いてもらい、自動的に商品が売れることに期待するとすれば、そんな民間企業にも大きな問題があるのです。

すでに地方産品への注目は十分に高まり、特徴があって市場性のあるものは東京都内や大都市のさまざまな売り場に並ぶだけのチャネルが出来ています。ネットもあります。そろそろ、官民ともにアンテナショップの惰性に任せた経営を見直し、正当な民間主導の販路開拓に戻ってもらえることに期待するところです。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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