なぜ呉服屋「さが美」争奪戦は後味が悪いのか ファンド争奪"泥仕合"が決着したが・・・
10月11日に開いた決算会見で同社の佐古則男副社長は「ニューホライズンとさが美との経営陣に信頼関係が構築できなかった」と説明する。「企業価値の向上が価格だけで左右されてしまえば刹那的な売買になる。総合的に検討して(アスパラントへの売却という)結論に至った」(同)。
この点に関して、ユニー・ファミマHDに袖にされたニューホライズンの安東泰志社長は真っ向から反論する。
合理的な説明は果たされたのか
安東社長によれば、さが美の経営陣と初めて会ったのはリーマンショック前後の2007年~2008年ごろ。同時期にユニー側とも会食をして、さが美について意見交換もしているという。
ニューホライズンは2015年7月にさが美に、同年12月には旧ユニーグループ・ホールディングスに対し、さが美の事業構造改革案や株式の買い取りについて提案していた。ただ、その後、両社から回答はなかったという。
今回の提案に際しても、ユニー・ファミマHDへ打診したところ、一度だけ担当役員と面会する機会があったが、「その場にいたフィナンシャルアドバイザーが書面の内容を確認しただけで、ほんの10~15分で終わった」(安東社長)。
さらに両社の間で相違が見られたのがTOBに対するスタンスの違いだ。今回、ニューホライズン側が主張していたのは「友好的なTOBを実施する」という点だ。ここでいう“友好的”とは買収先の賛同を得るという意味であり、あくまでさが美やユニー・ファミマHDの取締役会がニューホライズンの提案に同意をしたうえで、TOBを実行することにある。
安東社長は「企業再生ファンドのポリシーとして敵対的な買収はやらない。今まで90件以上投資をしてきたが、過去に1件も敵対的なものはない」と説明する。
一方で、ユニー・ファミマHD側の佐古副社長は「賛同表明が必要というのはニューホライズンの考え方。本来TOBを開始するのであれば賛同表明なしにできるはず」と主張する。
M&Aに詳しい早稲田大学大学院の服部暢達客員教授はユニー・ファミマHDについて「会社を売る以上、もっと高く買う人がいないか探すのは当然のこと。買い手とは真摯に交渉するのは株主に対する義務である」と指摘する。
ただ、ニューホライズンに対しても、「(アスパラントへの)対応TOBをかけるべき。TOBをかけると法的に容易に撤回できないという義務も生じる。言っている間は何もコミットしていないのと一緒」(服部客員教授)と手厳しい。
ニューホライズンの提案を、ユニー・ファミマHDはどこまで真剣に議論したのか。金額面で劣るアスパラントへの売却を選んだ以上、ユニー・ファミマHDが合理的な説明をする義務があるが、開示された書面や、会見での言動からはそうした内容が読み取り難い。
いずれにせよ、アスパラントはこの10年間で1度しか最終黒字を計上していない、さが美の経営建て直しを担うことになる。はたして計画通りに行くのか。
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