大転換の予兆? 金価格急落のミステリー ドルの信認回復をはやす声は勢いを増している

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勢いを増す楽観論

「金価格急落は楽観論を生み出す」。4月22日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、こんな見出しの記事を掲載した。「BRICs」の名付け親としても有名なエコノミストのジム・オニール氏(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント前会長)は「金価格急落は、日本にとって何かよいことが起こる予兆ではないか。もしかしたら金から国内不動産に資金が向かっているのかもしれない」とコメントしている。

「世界的なマネーフローの変化が起きているときだけに、今回の下落が何を意味するのか、社内でもさまざまな見方が出て意見を戦わせている」(メリルリンチ証券の吉川雅幸チーフエコノミスト)といったように、悪材料か好材料か判断を留保する見方もあり、各所で激論が巻き起こっている。

同じコモディティ(商品)といっても、石油や銅は基本的に景気、農産物は景気と天候で相場が動くが、金は違う。希少性が極めて高い金は、ドルを代替する安全資産という性格を持つ。債券や株式のような金融資産とも異なり、配当や利子収入などのインカムゲインはない反面、信用リスクもない。

このため、先行きの不確実性が高まると金が買われるほか、ドルの信認低下やインフレが見込まれるときは価値保全のため金に資金がシフトしやすい。いってみれば「ドル高なら金安」「ドル安なら金高」という構図が成り立つ。

00年代に入って、“爆食”を続ける中国など新興国による資源インフレがきっかけとなった金価格の上昇が、08年のリーマンショック以降に加速した原因は、「ドル安なら金高」という連想だ。世界経済の不透明感の高まりに加え、米国の大規模な金融緩和でドルの信認が低下し、金価格は一時1900ドルに迫る勢いだった。

長期間続いた金の強気相場が終焉を迎えたとしたら、これまでのシナリオが逆回転を始めたということになる。つまり、不確実性の後退とドルの信認回復を表している。

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