とはいえ、映画界に未練を残したまま、設計事務所に勤めていたとしても、それはきっと幸せじゃなかっただろうな、とは思います。安定的な立場を捨てる勇気は持てないが、一方で、やっている仕事は自分のやりたいことを我慢してまでも続ける価値があることなのか。そして10年後、20年後の自分は幸せだと言い切れるのか。それを自分に問いかけていました。
男性も恋愛ドラマが好き
――一般的にラブストーリーといえば、女性のものという先入観があります。しかし本作は多くの男性客の支持を集めたと聞きました。なぜ本作がこれほどまでに男性たちの心をとらえたのでしょうか?
そもそも男性が、恋愛ものが嫌いなんてありえないと思います。なぜなら、男性というものは女性が好きだからです。何とか彼女をものにしたいと思っているはずなのに、男性が恋愛ものを嫌いだということ自体がおかしいことだと思う。この『建築学概論』は男性の立場で、男性の恋愛を描いたので、男性に受けたのだと思います。
いわゆる女性が好みそうな恋愛映画というと、ファンタジーであったり、とても現実離れしたものが多いのですが、男性はそういう作品よりも、どちらかというと経験談のような恋愛ものを好む傾向にあると思います。『建築学概論』を見た方の感想でいちばん多かったのが、「この映画は僕の話だ」というものでした。そういう風に、自分の経験に重ね合わせることができるところが、本作が受けた理由ではないかなと思います。ただ、そのせいで苦労したこともありましたけどね……。
――どんなことで苦労されたのですか?
映画を見た男性が何人も「誰も知らないはずなのに、いったい君は誰からこの話を聞いたんだ?」とわたしに詰め寄ってくるのですよ。彼女と一緒に線路を歩くシーンなんかを例に挙げて、「あれは僕の話だ!」とか「君は僕を見たのか?」と、僕に絡んできたりとか(笑)。
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