数字が語る「シリア脱出」という困難な選択 難民87人のうち1人が溺死

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 10月5日、シリアの内戦勃発からすでに約5年6カ月が経過した。写真はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の支配地域から脱出し、シリア北部のアレッポ州ワクフに到着する人々。9月撮影(2016年 ロイター/Khalil Ashawi)

[5日 ロイター] - シリアの内戦勃発からすでに約5年6カ月が経過した。戦火を逃れようと同国を脱出した難民は10月1日までに推定30万2975人に達し、そのうち、欧州に向かう途中で少なくとも3502人が溺死した。

彼らの写真を見て、記事も読んできた。こうした数字はありのままの現実だ。

1隻のボートで地中海を渡るための費用は、昨年夏に1人当たり2200ドル(約22万7400円)だった。これは1年前の平均1500ドルよりも増加したという。

亡命を求める大半の移民と同様、シリア人も資金が乏しい。シリアのシンクタンク、シリア経済フォーラムの報告書によると、アレッポ市民の平均月収は昨年で約80ドルだった。

つまり、少なくとも難民87人のうち1人が溺死する危険な旅に、2年分の収入を費やさざるを得ないのだ。

彼らが脱出するシリアの経済はどれほど深刻な事態なのだろうか、2007年から2009年に発生した米国の金融危機時と比べてみたい。この間、米国の国内総生産(GDP)は年率で平均3.5%減少した。失業率は2009年10月に10%の高水準に達した。同じ年には14.3%の米国民が貧困線を下回る生活を送っていた。

一方、シリアではGDPが2013年に30%減少し、翌年さらに36%下がった。国民の82%が貧困線以下で生活しており、失業率は60%に達している。そして、2016年の見通しも引き続き暗い。空爆や化学兵器、全く不十分な医療ケアを考慮に入れなくてもだ。多くのシリア人が連絡困難な場所にいるため、国際援助団体とコンタクトするにも時間がかかる。

そして、子どもたちのことを忘れてはならない。難民の半数以上が18歳未満だ。彼らは何年も教育の機会も与えられていない。過激な暴力を目撃した彼らのトラウマは言うに及ばずだ。

突然非業の死を遂げる可能性の高い国内にとどまるより、2年分の収入を費やし、命を賭けて安全な場所へと脱出することは、極めて健全な判断だと思える。

(Jillian Harding記者)

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