日本人の5人に1人を襲う「脳卒中」の恐怖 脳の仕組みを知れば仕事も生活も豊かになる

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後遺症にマヒが残ると、リハビリで感覚を取り戻す必要がある(撮影:大澤 誠)

脳卒中で倒れマヒの後遺症が残った人の大半に、高次脳機能障害の症状が現れるとされる。話せなくなる言語障害や、ものごとを段取りよく進められなくなる遂行機能障害など、人によってさまざまな症状が出る。

澁谷さんは、「健常だった頃と明らかに判断能力が違う」ことに苦しんだ。交渉や判断が難しくなり、ささいなミスを重ねてしまう。やむなく仕事のペースを従来の半分まで落とさざるをえなかった。

何よりつらいのは、一見すると障害者とわからないことだった。周囲に後遺症の存在が伝わりにくいため、あらぬ誤解や摩擦を生んでしまう。それが仕事の障壁になった。

元の生活に戻るハードルが高く、うつになる人も

澁谷さんのように、後遺症を抱えながら社会復帰している脳卒中患者は多い。しかし元の生活に戻るハードルは高く、脳梗塞後に3割の人がうつになるといわれている。脳卒中は死亡率が低い一方で、後遺症を抱えながらその後の人生を過ごす必要がある。

心臓内科として数多くの患者を診察してきた、山王病院・山王メディカルセンターの内山真一郎氏によれば、まず気を付けるべきは、高血圧、次に糖尿病、そして脂質異常でLDLコレステロールが高い、あるいはHDLコレステロールが低い。この3つが特に危険因子となる。さらに喫煙や大量飲酒、不整脈の1つである心房細胞、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病もリスクを高めるという。該当する人は脳卒中予備軍として要注意だ。体と心に抱えた後遺症に苦しむことがないよう予防に努めたい。

脳はいまだ人類にとって未知の領域。その仕組みとその活用、脳の病気について知ることは、仕事や生活を豊かにすることにつながるはずだ。

長谷川 隆 東洋経済 記者

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はせがわ たかし / Takashi Hasegawa

『週刊東洋経済』編集長補佐

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

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