また、韓国では核の「共同管理」を求める意見が出た。核兵器の共同管理は米国と一部のNATO諸国(ドイツ、イタリア、オランダおよびベルギー)との間で行われているが、核攻撃のボタンをどちらでも押せるようになっているのではなく、最終的な決定権は米国だけが持っている。それでも共同管理国内に核兵器があるので一定の抑止力になると考えられており、それに倣いたいということだ。
さらに韓国では核武装論も沸き上がった。しかし、北朝鮮の挑発的行動に対し韓国が強く反発するのはごく自然なことである反面、軍備拡張競争を惹起する危険がある。自国の側に理由があると信じつつも、結局相手国との間で軍拡競争に陥ってしまうことは人類の歴史で何回も繰り返されてきたことであり、そのようなことにならないよう努めることも必要だ。
前述の核実験の禁止に関する決議は、北朝鮮が挑発的な行動を続けるさなかに成立したが、北朝鮮をけん制することが狙いだったのではない。核実験自制決議は特定の国を対象としておらず、CTBTを批准していないすべての国が対象だ。米国もその中に含まれる。
しかし、米国は朝鮮半島情勢の悪化を防止するうえで大きな役割を果たす特別な国だ。北朝鮮問題については、国連での制裁決議の強化も必要だが、北朝鮮がもっとも重視している安全の確保問題を解決できるのは米国だけである。米国による北朝鮮承認(平和条約締結)と引き換えに、北朝鮮の核放棄がバーターになりうる。北朝鮮と親密な中国は、すでに北朝鮮を承認しており、米国のような役割は演じられない。この問題が解決しないかぎり朝鮮半島情勢の真の安定は実現できないので、米国には平和条約と非核化を対象に北朝鮮と交渉を始めてほしい。
韓国の暴走を牽制するべき
また、韓国に対しては、韓国の北朝鮮に対する対応が過激にならないよう米国から働きかけるべきだ。おそらく米国はすでに韓国と話し合っているだろう。核の共同管理を米国が断ったのは賢明な対応であった。韓国としても、北朝鮮の挑発的行動に備えるためとはいえ、軍備の増強など強気の姿勢だけでは危険があるはずだ。
日本の立場も微妙だ。日本政府は、オバマ大統領の「核先制不使用」構想が伝えられると韓国とともに(共同してという意味でない)、宣言を止めるよう米国に要望した。
そのような宣言は挑発的行動を続ける北朝鮮に対して誤ったシグナルを送るおそれがあるという理由からだろう。しかし、日本や韓国の主張は単純化され、必要な時には核を躊躇なく使ってほしいという、あたかも核使用積極論であるかのように伝えられる危険がある。
つまり、こうした問題では丁寧なコミュニケーションが必要だ。日本政府には、安全保障と軍縮のバランスを取りつつ、わが国とアジアの平和と安定に努めることが求められている。
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