変身!「ミスターミニット」が印鑑を売るワケ 青山商事傘下入りで「コンビニ化」を推進
9月のある平日、朝9時半。「MISTER MINIT(ミスターミニット)」日本橋本町店(東京・中央区)。1人の女性がヒールを手に持ち、店に駆け込んできた。「かかとの修理をお願いします」。そう言われ、受け取ったヒールを職人が作業に取りかかると、わずか3分で直し、戻ってきた。短時間で靴修理を行うスピードは、相変わらずの根強い人気だ。
1972年、三越日本橋店(東京・中央区)と高島屋日本橋店(同)など百貨店への出店を皮切りに、国内で40年間以上、靴修理事業を展開してきたミニット・アジア・パシフィック。同社は今、変貌しつつある。
転機は2015年12月だった。紳士服業界トップの青山商事が146億円で買収、ミニットは完全子会社となる。が、当時のミスターミニットは、2016年3月期の売上高が155億円(前期比2.6%増)、EBITDA(税引前償却前利益)が18億円(同28.5%増)と、規模は小さいながらも優良企業だ。あえて青山商事の子会社となることに、疑問の声もないではなかった。
ミニットと青山商事、それぞれの思惑
ミニットの売上高全体のうち、日本が占める比率は約5割。国内で292店舗を展開している(2016年8月末時点)。日本の売上高のうち、靴修理は7割を占める。ただ、従来通りの投資ファンドの下では、中期的な成長が難しいと考えていた。事業会社として相乗効果を期待でき、豊富な資金力と広範な国内店舗網を持つ青山商事は、よりベターな相手だった。
一方の青山商事は、少子高齢化によるスーツ市場の縮小がジワリ直撃。事業領域の拡大に向けて模索していた。その中で、ミニットはビジネス用の靴の修理を主力としており、本業のスーツとも親和性が高い。図らずも両者の思惑は一致した。
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