沿線人口にも影響?特急料金値上げの波紋 利用者数減少で自治体が人口流出懸念
このデータからは、常磐線列車の品川駅への乗り入れ開始により、「茨城県のイメージアップ(交流人口の拡大)」(茨城県企画課)が図られ、交流人口の拡大が一定程度実現したと解釈してよさそうであるが、それは普通列車の乗車人員増加で実現したと言える。
水戸市市長公室交通政策課も「通勤・通学に要する経費の大幅な負担増が本市の居住地としての魅力低下を招き、通勤・通学の経済的負担の少ない東京方面への人口流出が起こり得る」と特急料金値上げによる人口減少への懸念を示す。さらに特急乗車人員についても「高速バスの輸送量の実績なども参照しながら、今後注視してまいりたい」と、高速バスへの利用の転移を発生させる可能性を視野に入れていることが伺える。
料金ほぼ倍額、座席指定に手間
それでは、常磐線の特急料金制度が変更された結果、消費者にとってどれだけの負担増となったのだろうか。
たとえば、上野駅~佐貫駅間47.7kmの場合、自由席特急料金は510円、「定期券用月間料金券」は1万5600円であったが、2015年3月14日以降は、指定席特急料金は750円(事前料金)に変更され、月20日往復利用する場合は3万円とほぼ倍額になってしまったのである。
ただし、「えきねっと」チケットレス特急券では100円割引の650円、月20日往復利用では2万6000円となる。さらに、「えきねっと」チケットレス特急券の場合、1回の購入につき30ポイント(1ポイント=2.5円)が付与され、月に1200ポイント(3000円相当)が貯まることから、実質的な1カ月の特急料金は2万3000円となり、「定期券用月間料金券」との差額は7400円にまで縮小する。
しかし、自由席と比べて座席の指定を受ける手間が増え、値上げになった事実に変わりはない。冒頭の40代男性会社員は、乗車ごとに座席指定を受ける手間がかかるようになったことも、特急利用にメリットを見いだせなくなった大きな理由のひとつであると明かす。
さらに、常磐線特急では車内で特急券を購入した場合、260円の車内料金が加算される。たとえば、特急券を購入せずに、常磐線の特急通過駅や他路線の窓口のない駅(無人駅など)から東京近郊区間完結の乗車券で旅行を開始し、ホーム上または改札内に指定席券売機がない特急停車駅で特急に乗り換えようとする場合、当該乗車券は下車前途無効のため、旅行開始後はルール上、特急券を乗車前に購入することはできないことになる。
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