日立、はるか先を走る「鉄道3強」超えの秘策 ベルリンの見本市で東原敏昭社長が激白
生産拠点の国際化に加え、信号メーカーを手中にしてビッグスリーと同様にフルターンキー体制が整った。日立は、現在の鉄道事業売上高3526億円を2018年度には6400億円に高めたいという展望を描いている。英国案件が売り上げに寄与してくるので不可能な数字ではない。それでもビッグスリー各社の鉄道事業の売り上げは8000億~9000億円に達する。追いつくにはもう一歩足りない。
「2020年代の早い時期に売上高1兆円を目指したい」――。日立製作所の東原敏昭社長は、さらなる業績拡大に意欲を見せる。達成のためには将来のM&Aも「考えていかないといけない」という。しかし、1兆円目標の実現に向け、東原社長にはM&Aよりもまず実現させたい、もう一つの秘策がある。
鉄道とITの融合でトータルコスト削減
「日立が目指しているのは、車両製造だけではなく、ライフサイクルを通じたサービスの提供」だと東原社長は言う。その意味するところは、車両を納入しておしまいではなく、運行・保守も含め鉄道のライフサイクル全体で稼ぐビジネスモデルの構築だ。
たとえば、車両にIT機器を搭載して常時モニタリングを行なう。そのデータを蓄積すれば、故障の予兆を把握できる。そうなれば、故障する前に修理することで保守コストを引き下げることができる。つまり、トータルでのコスト削減につながることを顧客にアピールできるわけだ。
日立のライバルはビッグスリーだけではない。売上高3兆8000億円という世界最大の鉄道メーカー・中国中車が世界各地の市場に食い込む。その武器は中国企業ならではの、車両製造コストの安さだ。
ドーマー氏は、「我々は車両製造という初期段階のコストではなく、ライフサイクルコストを下げることに力を入れているので競合関係にはならない」と、中国との違いを強調する。初期コストの安さが重視される案件で中国が有利になるのは仕方がない。日立は、あくまでトータルの安さを訴えていく。
車両をIT化する効用はコスト削減にとどまらない。早期に部品を交換して故障を未然に防げば、列車の安定運行につながる。英国では日立の列車になってから故障が減ったので、早めに会社に行く必要がなくなり、子供といっしょに朝食を食べてから通勤できるようになった――。こんな話を東原社長は英国で聞いたという。「IT化は人々の生活の質を高めることにつながる」(東原社長)。
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