日立、はるか先を走る「鉄道3強」超えの秘策 ベルリンの見本市で東原敏昭社長が激白

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日立がフィンメカニカ傘下の鉄道2社の買収を検討していることが明るみになったとき、日立が本当に欲しいのは鉄道メーカー・アンサルドブレダではなく、信号メーカー・アンサルドSTSだというのが、もっぱらの観測だった。ビッグスリーは車両と信号などのインフラを設計・建設から保守まで一括で請け負う「フルターンキー」契約で業績を伸ばしていた。アンサルドSTSは、ヨーロッパ標準信号システムや無人運転システムに強みを持ち、顧客も多い。車両メインの日立が海外で業績を伸ばすためには、独自の顧客基盤を持つ信号メーカーがのどから手が出るほど欲しかった。

一方、車両メーカー・アンサルドブレダは、イタリアを代表する車両メーカーでありながら、近年は他国の鉄道会社に納入した車両にトラブルが相次ぎ評判を落としていた。業績も赤字。しかも買収後に従業員のリストラは行なわないなどの制約もついた。日立はアンサルドSTS株式の過半数を取得するのに1000億円超を投じたのに対し、アンサルドブレダの買収価格がわずか48億円だったということからも、両社の位置づけがよくわかる。

日立が鉄道に注力する理由

とはいえ、ひょっとしたらアンサルドブレダは安い買い物だったのかもしれない。買収後、アンサルドブレダは「日立レールイタリア」と名を改め、その重要性はにわかに高まった。日立は英国向けの標準型都市間車両「AT300」を1308両受注しているが、日本と英国の工場だけでは生産が間に合わない。そこでイタリアにも車両生産を受け持ってもらうことで、効率化を図る。しかも、現在は英国EU離脱で英国と欧州大陸との関係も不透明感が漂う。その点でも英国とEUの両方に製造拠点を持つ利点はありそうだ。

ベルリン市内で取材に答えるドーマー氏(記者撮影)

それにしても、なぜ日立は鉄道事業に経営資源を集中するのだろうか。世間では「鉄道産業は成長性が高い」と喧伝されるが、交通系調査会社SCIフェルケールによれば、世界の鉄道市場の今後5年間の予想成長率は2.3%にすぎない。高い成長性が見込めないと判断したからこそ、フィンメカニカは鉄道2社を手放した。

この点に関してドーマー氏は、「日立の鉄道事業には勢いがある。しかし、世界の競争相手と戦うにはもっと規模を大きくしないといけない」と語る。確かに日立は英国の1兆円案件を押さえたことで市場平均を上回る成長が約束された。さらなる成長エンジンとして、「イタリアの2社を買収したことで世界各国に生産拠点を持つことができ、事業バランスが改善された」とドーマー氏は言う。

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